LV.4 Senior Design Engineer 向け デザイン専門能力高度化プログラム- No.09
ヒューマンセンタードデザイン特論
エスノグラフィックアプローチとコンセプトデザイン
2011年3月5日(土) 10:30~18:00
インターナショナル・デザイン・リエゾンセンター
■ 概要
近年、人間中心設計で注目の高い “エスノグラフィック・アプローチ”に焦点をあて、
その理論的な枠組みを解説するとともに、演習を通して分析手法を学ぶ。
■ 習得できる知識・能力
人間中心設計、エスノグラフィの論理的枠組み、エスノグラフィ調査の手法、エスノグラフィで得られた結果の分析手法
■ 講師:安藤 昌也 Masaya Ando
産業技術大学院大学 助教
早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
NTTデータ通信株式会社(現株式会社NTTデータ)を経て、
1998年 アライド・ブレインズ株式会社の設立に参加。取締役に就任。ユーザビリティ・アクセシビリティを中心にコンサルティング業務に従事。
2008年より公立大学法人首都大学東京 産業技術大学院大学 産業技術研究科 助教。
ユーザエクスペリエンス(UX)、人間中心デザインの研究と教育に従事。
2008年 ヒューマンインタフェース学会論文賞、計測自動制御学会SI2008優秀講演賞。
2009年 総合研究大学院大学 文化科学研究科 メディア社会文化専攻修了。
博士(学術)。
2011年 千葉工大 准教
■エスノグラフィック・アプローチとコンセプトデザイン
・安藤先生のコンサル時代
→とにかく、現場のユーザを観よ!
・本日のキーワード
→エスノグラフィ
↓
民族誌学
※ウルルン滞在記みたいなもの。
・参与観察
→最近はフィールドワークの方法論として言われることが多い。
■応用エスノグラフィ
・応用エスノグラフィの領域には2つある。考え方は同じ。
だが、目的が違うと調査の観点が異なってくる点に注意
・フィールドワーク
→主に商品やコンセプトの開発者が目的
例:インフィールドデザイン(代表の佐々木さんはIDEO出身 深沢直人さんともいっしょにやっている)
→主に改善や最適化が目的
例:博報堂 富士通
■コンセプト開発に期待されるエスノグラフィの役割
?エスノグラフィをやって、商品の何かが変わるの?
→エスノグラフィとは呼ばないが、訪問してのユーザー調査はやっている会社もある。
例:ザ・プレミアムモルツ
・モルツプレミアムという商品があったが、売れなかった・・・
→「プレミアム」に注目した!
→名前の順番を変えただけ。
→金曜日はプレモルの日
↓
金曜日はご褒美の日
→なんで永ちゃん?
↓
永ちゃんはプレミアムモルツぐらい毎日飲めるだろ、じゃぁなぜ?
↓お金持ちの永ちゃんでもちょっとしたご褒美にモルツを飲むぐらいプレミアムな商品というシーンを表しているデザイン。
※モノがプレミアムではなく、プレミアムなときを過ごすというコトのデザイン
※最初にプレミアムを出したときは、商品の価値を見いだしたが、
あとのプレミアムモルツは「プレミアム」なシーンに変換した。
■ドトールの例
→安藤先生の上司が担当。
→当時は安いコーヒー代表だったため、
高級店として「エクセシオール・カフェ」を出店
・夜はお酒を出す、二毛作カフェと呼ばれた
→エクルシオールカフェにリニューアル
前者は「モノの進化=高級化」
後者は「意味の転換=シーン」
※プロントとは「こんばんは」という意味
※スターバックは「サードプレイス」というコンセプトで作られている →家と職場以外の第三のカフェ
★生活の中で意味を持たないモノや行為は存在しない
↓
生活の中に意味が埋め込まれている
(英語ではSituated)
? 「生活の中に埋め込まれた意味」ってどうゆうこと?
事例:安藤先生のお母さん
→安藤先生のお母さんは柔軟剤のことをすべてソフランと呼ぶ。
「昌也 柔軟剤は二回目のすすぎのときにいれるのよ」
→安藤先生のお母さんは全自動洗濯機なのに、
洗濯機の動きを気にしつつ、手動で柔軟剤を入れていた。
→安藤先生のお母さんのメンタルモデルでは、
柔軟剤はコーティングだと認識している。
コーティングなので、汚い水ごとコーティングするんじゃないの?
→洗濯機の自動投入口を使っていない・・・・
→安藤先生のお母さんだけではなく、以外と多いらしい。
↓
思い込みで商品を使っている
★人々は思い込みの世界に生きている
(Reality Remade)
→社会構築主義
■社会構築主義
エスノグラフィは人々の生活の中に埋め込まれた
「モノや行為の意味」を解釈すること
→安藤先生のお母さんの行為も何かしらの意味を持ってやっていることに注目することが重要。
→じゃあ、どうすればデザインに生かせるの?
■デザインへの導入
生活の知恵 = 蓄積された経験
洗濯物をきれいにふんわり仕上げる「生活価値」
↓
経験の蓄積により無意識に行っている行為の背景には、
ユーザが真に実現したい価値=ニーズが潜んでいる。
↓
製品名にその「価値」を入れてあげる。
・最初に入れても、ふんわり仕上がる
・きれいな水の状態でふんわり仕上げをする機能
例:小林製薬などが実践している。
■エスノグラフィによる商品コンセプト開発の概要
調査→解釈→転換
■エスノグラフィックアプローチってどうやってやればいいの?
例:安藤先生のトヨタの仕事
■ユーザモデリングの階層
属性層→行為層→価値層
※デザインとは価値と行為を結びつけること。
→行為をデザインする。
■エスノグラフィを体験するワークショップ
→午後にて実践
■エスノグラフィって「観察?」
安藤先生は月曜日に深沢直人さんと行動観察に行くらしい・・・
深沢直人さん曰く「聞いちゃだめ!」
※観察はするけど
後付けの意味を聞いておかしなものになるので、聞いちゃだめ!
※行為をインタビューすることによって、本質的な価値を見いだす。
※インタビューしないわけではない、
「観察とインタビュー」を組み合わせて「観る」ことが大事
→without thought
■観察とインタビューの相補関係
インタビュー → 内観
※今はフォトエッセイという手法でやることが多い。
「見れば見るほど見えてくる」
~to see more to see~
■汚い部屋の事例
→これも車の仕事の一部らしい。
→デザイナーとしては、こういう部屋をなんとかしてあげないという思いに駆られる。
→自分の生活範囲に欲しいものがまとめられている
※「なぜこの人はこういう風にしているんだろう?」
→「問い」を立てて観る
※IDEOでは「5 why? カード」と呼ばれている
■観察の心構え(4つのおきて)
①問いを立て、観察の焦点化を行う。観察を重ねるごとに、焦点の精緻化を行う。
②仮説、予見、思い込みを持ってフィールドに臨まない
③ユーザを観る。ユーザ中心に観る
④フィールドでは記録に徹する。解釈は帰ってから行うつもりで観る
おひるごはん
■フィールドワークの分析法
・定性情報分析法
・よくGTAを定性調査として使うが、手間がかかるため、
お手軽にできるKA法を使う。
※GTA = グラウンデッドセオリーアプローチ
■KA法
※KA法は、(株)紀文食品のチーフ・マーケティング・アドバイザーである、浅田和美氏が2006年に開発し公開した方法である。
特に、消費財のマーケティング開発分野で注目されつつある手法である。
例:千葉工大でのワークショップ
・料理するだけの分析だけでも、その背景には様々な価値がある。
・価値の記述注意
・あまり抽象的にしない。
・ユーザーが感じている価値を書く。
× リッチを体験するする価値
→もう少しユーザーの背景を読み取る。
■ワークショップ
お題:「某飲料メーカーの新しいサービスを考える。」
▼チームメンバー
・菊池さん:建設機械・駐車場などの設計
・五ヶ市さん。SonyデジタルネットワークアプリケーションズのUI設計
・武井さん。日立テクニカルコミュニケーションズ
・羽山さん。大塚商会(大学のクラスメート)
▼進め方
①普段自分が「できているコト」と「できていないコト」の写真を撮ってくる、
難しい場合は、誰かに演じてもらってもOK。
また、他の人がそれをどうやっているのかを観察してくる。
「できているコト」→自分と他人の2枚。
「できてないコト」→自分と他人の2枚
の4枚を撮影してくる。
②写真を加工し、価値シートを作成
③出来事の部分だけ、自分で記入。
④出来た価値シートをシャッフル
④回ってきた価値シートの「ユーザーの心の声」「価値」を記入
⑤KJ法
※中分類のマップを無理に関連づける必要はなく、
わからない箇所を、観察してきた写真でつなげる
※写真の下には付箋をつけ、そのときのキーワードや、人工物の情報を書いておく(写真だけだとわからないため)
※近い要素を近づけて行き、内容を噛み砕いて、中分類を作成。
※各要素の背景、関係値を理解するようにする。
※エスノグラフィは、すごい細かいことでも、
ボトムアップしていくことが必要。
→読み取りかたを間違えると大変・・・・
■まとめ
現在の日本では、エスノグラフィがやりっぱなしになっている、
KA法などを使って、価値マップを作ることが必要。
→得られたアイデアは、思いつききではなく、
100%のユーザ調査の結果となる。
たとえ反論されても、写真と記述を見れば、
裏付けができる・・・・
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