第5回 新横浜ユーザビリティ研究会

横浜デジタルアーツさんで定例的に行われている、
「新横浜ユーザビリティ研究会」の第5回に参加してまいりました。

■日時:5月10日(火)16:00~18:00
■場所:横浜デジタルアーツ専門学校701教室(新横浜)
■内容:今回はU’eyes Designさん特集です。

■16:00~16:30
 Usability decade 
 U’eyes Designにおけるプロダクト系ユーザビリティ活動の10年を振り返る
 尾形慎哉

■本発表のねらい
 →ユーザビリティ活動の変化についての振り返り

■U’eyes Designについて。
 ・活動内容
 「designによる開発支援」を行っています。
 (カタカナのデザインではないところがこだわり)

 ・特徴
 「徹底的なユーザー情報に基づく顧客課題の解決」

■開発支援事例紹介(プロダクト系を中心に事例を紹介)
 ・自動販売機のUI設計
 ・携帯電話などのGUI設計
 ・券売機の設計(初めてHCDを取り入れたプロダクト事例)
  ( 現在のシェアは6割。)

■自動券売機デザイン開発
 ・2000年に開発をスタート。
 ・HCDサイクルを取り入れた。
 ・公共の端末として、全てのユーザーに対応するため、
  実際にユーザーテストを実施した。

 ・デザインによる解決を行った。
  (車椅子ユーザーでも利用できる、蹴込み
  高齢者でも利用できる、色に頼らないGUI設計
  (色だけではなく、形も変えるようにした。)
  全盲のユーザーでも利用できる、フィンガーナビゲーション
  (U’eyesの全盲の社員も実際にPASMOをチャージできた。
  ただフィンガーナビゲーションは使ってもらえなかった。)

■セルフガソリンスタンド端末UI開発
  ▼顧客要求に合わせた支援
   (短納期・システム制約条件・社会環境)

  ▼デザインによる解決案
   ・(タスクフロー+問題シナリオ→問題点発見・共有
   ・ 液晶パネルの特性に合わせたGUIデザイン(実際にテストした。)
   ・普及段階を考慮した丁寧なナビゲーション。

■10年でのユーザビリティ活動の変化
   ・2000年 ISO13407がJIS化した。
    2005年 HCDnet発足。
    2008年 電子政府ガイドライン。

   ・尾形さんは、業務を始めた時は「券売機のユーザビリティ評価」や
    「ATMのユーザビリティ評価」などをしていた。

   ・近年では「複合機ユーザー要求定義」などで、
    コンテクストラダーリングやペルソナ・シナリオ法で実践した。

   ※10年前はクライアントが品質保証部門やデザイン部門だったが、
    最近はマーケティング部門がクライアントになっている。

  ▼10年前
   ・ユーザビリティを定量的に説明いできるようにして欲しい(NEM法)
   ・説得材料としての報告書が保証。

  ▼現在
   ・開発関係者(部門)の拡大→上流工程からの検討
   ・HCD手技法の充実→HCD教育体系の基盤
   ・HCD適用範囲の拡大→多用な業種でのHCD適用(医療関係など)

   ・10年間でHCDのノウハウも溜まってきて、効率的にできるようになってきた。
   ・HCDをこれから導入していく企業も増えているが、
    ペルソナなどはあんまり費用対効果などが見えにくい点もあり、
    ユーザビリティ調査などのほうが結果が見えやすいため、
    取り組みやすい。

   ・HCDに取り組む人材のスキルは?
    →戦略から戦術に落とし込むことまでできるような人材が求められているのではないか。

■16:30~17:00
“物語”を重視した取扱説明書デザインの取組み紹介
伊藤英明

シナリオ・ペルソナ法と物語法の違いは?
 →物語法は「物語がハッピーエンド」になるシナリオがあり、
  それを製品開発のストーリーに当てはめたもの。
  ※別の伊藤さんの論文がある。

 ★物語性を考慮した人間中心設計に関する一考察
  http://www.ueyesdesign.co.jp/rd/thesis/Narrative_in_HCD_doc.pdf

■日産LEAF 簡単早わかりガイド
  ・小冊子
  ・HCDのプロセスに沿った開発。(1周半行った。)

■簡単早わかりガイドのコンセプト
  →利用初期における手引書

  ・ガイドをみながら操作すれば、目的を達成できる。

  ・どんな時に使う機能なのかわかる。
   →利用シーンやシニュエーションにあわせた。

■取り扱い説明書デザインへの物語の活用
  ・「電気自動車の利用」という、ほとんどのユーザが体験したことのない機能や操作を、

  「今日LEAFが納車されたユーザが準備をして出かけるまで」
  「LEAFに乗って外出して帰ってくるまで」

  というストーリーで取り扱い説明書を作成した。

■ペルソナの設定
  ・細かい設定は守秘義務で出せない。
  ・通常、ペルソナで設定する要素(年齢、職業etc.)に加え、電気自動車に対する印象、休日の過ごし方などを追加。
  ・今回は日本人と外国人の2つを作成した。

■プロトタイプを用いた評価
  ・プロトタイプを用いて、タスク達成型のユーザビリティテストを実施。

  ・ただ、目次から見て行けばタスクが完了できるようではだめで、
   シャッフルして、どこからでもタスクを完了できるように設計した。

  ・テクニカルコミュニケーション協会のテスト項目8種で評価した。

■改善の方向性
 ユーザーテストを実施し、以下のような改善の方針を検討した。

  ・ページ構成に関する問題
   →充電(普通・急速)に関する項目や、対の関係(電源 ON/OFF)にある機能を別々に掲載する。

  ・ページ内で示す手順の順番
   →ユーザが効率よく操作できる手順を掲載する

  ・各コンテンツ内容に関する問題
  →詳細な操作箇所や方法に関するページを設ける

■まとめ
  ・「電気自動車の利用」という、ほとんどのユーザが体験したことのない機能、
   操作を説明するにあたり、
   「ユーザがLEAFを利用する」というストーリーの中で、
   プロトタイプのコンテンツ内容、掲載順を検討した。

  ・手法としては「シナリオベースドデザイン」に近く、
   電気自動車ユーザの特徴や利用状況をストーリーの想定によって補うことができた。

  ・このプロトタイプを用いて、このようなコンセプトで作成されたマニュアルの受容性と
   ユーザビリティの評価を行い、
   その評価結果から改善デザインを作成した。

■本編の目次
  ・グラフィックインデックスで作成した。
  ・ここでも想定利用シーンを作成して、必要な機能とデザインを決めていった。

■ユーザビリティテスト
  ・実際の車両の中で行った。
  ・伊藤さんは助手席でファシリテーター。
  ・後部座席でカメラマンが撮影した。
  ・発話思考法も併用した。
  (発話思考法の説明としては、「手本を見せる」「独り言のようにやってもらう。」)

■質疑応答

 Q. シナリオの妥当性についてはどうやって判断したか。
 A. 評価前はクライアントとのディスカッションで。
   評価後は、ユーザーが「内容をどう理解したか」が分かるので、それで妥当性を判断した。

 Q.モニターとペルソナの違いなどが出てくると思うが。
 A. 実際のユーザーがLEAFに興味がある、という場合は想定通りだった。
   しかし、興味がなかった場合などに、達成率が悪かったりした印象がある。

■17:00~17:30
ユーザエクスペリエンスデザインのための発想法「XB法」のご紹介
三澤直加

■XB法とは。
 →User eXperience Brain storming

■XB法の発想のフレームワーク
 ・ 「UX」を3つの要素で捉える
  
  価値観×対象×体験

 ・3つの要素を別々に展開した後、掛け合わせていくことで、
  体験のシナリオを創出。

■XB法の発想をするためのツール

 ・いいUXパターンを書きだしたカード(XB法カード)と、UXを発想する展開シート。
 をツールとして提供。

■XB法を開発した経緯

 ・ユーザビリティ→使えることが当たり前になってきた。
  →もっと満足できる商品の開発が必要に。

■イノベーティブな開発への障害
 ・ユーザーにとっての価値がわかりにく。
 ・展開したアイデアの価値を共有・蓄積しにくい。
 ・アイデア展開が苦手な人は成果を出しにく。
  ※依頼はデンソーさん。

■イノベーティブな開発へHCDアプローチ

 ・ユーザにとっての「価値」がわかる!
  →コンテクスト調査

 ・展開したアイデアの「価値」を共有・蓄積できる!
  →シナリオ法

 ・アイデア展開が苦手な人でも成果がだせる!
  →情報を効果的に活用できるシステムづくり

■感動体験を体系

■どんな風に発想するの?
 1.キーワードを言い換える。

 例:新しいスマートフォンアプリ

  価値観:ずっと憧れだった
  対象:歴史の原点
  体験:偶然表示された。

        ↓言葉を掛け合わせる。

 憧れのものに由来する歴史的情報を、その場所に近づいたタイミングで表示してくれる
 位置情報活用アプリ。

■XBの活用事例
 ・「XB法+プロトタイピング」や「XB法+利用状況調査」とその他の手法と組み合わせることが可能。

  ※iPhoneアプリの「発想会議」を開発中。

 ・これまでの一般的な商品開発のアプローチ。
  spec→function→interface→experience。
  これを使うことで何が得られるんだろう?ということをユーザーに思われてしまう可能性があった。

  XB法は逆にexperience→interface→function→specとなる。

■質疑応答

 Q.何人でやると効果があがるなどはあるのか。
 A.1人でも効果的
  4?5人で付箋紙を使うと、かなり広がる。

 Q.価値観・対象・体験は、どうやって選ぶのか。
  →「 対象」については、ターゲットユーザに近いほうがいい。
  →発想をするときにも、ペルソナは意識したほうがいい。
   ポストイットを掛け合わせる時では混乱する。

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■打ち上げ

打ち上げは近くの焼き鳥屋さんで・・・
飲み放題で3500円という縛りがあるなかで、
クオリティの高い飲み会でした。
インターソフトの五十嵐さん、ありがとうございました。

・白iPhoneと、現在開発中のアプリで盛り上がる一同。

・#hcdvaleのワークショップでXB法をやってみて、上手くいかなかった点を、
共有し、アドバイスをもらう。

セミナーが目的というよりも、
懇親会での振り返りなどが目的なところもあったのですが、
専門家にご意見いただくことができ、
非常に密度の高い一日でした。

■外部リンク

 情報デザイン研究室
 http://asanoken.jugem.jp/?eid=1888

 WarlockReport
 http://www.warlockreport.org/archives/2011/05/10/2318.html

 togetter
 http://togetter.com/li/134050

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