第9回情報デザインフォーラム前半 2012年05月04日

ゴールデンウィークまっただ中に行われた、
第9回情報デザインフォーラムに参加してきました、

 第9回情報デザインフォーラム
 http://kokucheese.com/event/subscriptions/32727/

今回は現在執筆中の「情報デザインのワークショップ」の執筆メンバーが、
実践しているワークショップについて発表する内容で、
120名の枠があっという間に埋まるほどの盛況でした。

前半は「大学でのワークショップ」、
後半は「企業でのワークショップ」として講演があり、
講演のあとでは、飲みものとスナックが用意された、
大学生のプロジェクトのパネル発表がありました。

■第1部 大学でのワークショップ

情報デザインのワークショップ

山崎和彦(千葉工業大学教授)

 ▼情報デザインの教室
  →ちょっと内容が難しいという意見があった。
   それを補完する意味で、ワークブックがあるといいと考えていた。

 ▼ワークショップ
  学ぶ楽しさだけでなく、デザインに活かせるワークショップを考えている。
 
 ▼ワークショップとは?
  ・ワークショップは誰がするのか?
    デザインチームのメンバーとのワークショプ
    デザインチームとユーザーのワークショップ
    ユーザーとユーザーのワークショップ
    デザイナーとクライアントとのワークショップ
    デザインナーとエンジニアとのワークショップ

  ・ワークショップの目的
    自主的な学び、学ぶ楽しさ
    複数人による発想の拡大、視点の広さ
    共有、合意形成
    相手の理解促進

 ▼体験するデザインワークショップ
  
   →自分が体験する
   →チームと一緒に体験する。  
   →ユーザーの体験をする。

 ▼情報デザインのワークショップ
  情報デザインの初心者がワークショップを通して情報デザインの基礎を学ぶ
    1. 「情報デザインの基礎」と「情報デザインのワークショップ」を知る。
    2. 「情報デザインの基礎」をワークショップで学ぶ
    3. 「情報デザインのワークショップの事例」を知る。
  

■体験からはじまるデザインワークショップ
 デザインの基本は、「情報から本質を見つける」
 「本質からアイデアを視覚化する」2つが必要である。
 この2つを「何度も、たくさん、いろいろな角度」する中でよいデザインが生まれる。
 
 このワークショップでは、この2つを「何度も、たくさん、いろいろな角度で」やるスキルと、
 マインドに集中して一緒に学びたい。楽しく、スキルを身につけましょう。

 ▼1. 体験を観察するワークショップ
  
  例:コンテクストデザインワークショップ
    ワークショップの目的:本質から探す
  
    津田沼のカフェにいって、
    コンテクスチュアルデザインの5つのワークモデルシート
    (フローモデル・物理モデル・人工物モデル・シーケンスモデル・文化モデル)を使い、
     観察をした。

    http://kazkazdesign.blogspot.jp/2009/02/blog-post_28.html

  例2 観察とデザインパターンのワークショップ
     →御宿で合宿をし、「嬉しい体験」をKA法で視覚化した。
      リアルタイムドキュメンテーション担当者を置いて、
      作業内容についても可視化した。

      ※従来のKA法と違う所は「スケッチ」を取り入れた。
   
     6個のパターンを作り上げ、
     そのパターンを使って、デザインのブラッシュアップを行った。
      
     ※うれしい6つのパターン
      ・実は見守られている
      ・想像の裏をつく
      ・親身になってくれてうれしい
      ・まったりNewLife
      ・送る人の気持ちが宿っているぽさがでている。
      ・心地よい非現実感

     http://kazkazdesign.blogspot.jp/2011/09/blog-post_17.html

 ▼2. 体験から発想するワークショップ

  エコデザインワークショップ
   →エコデザインの4Rを使い、マトリックス法にてアイデアを作成した。
    横軸: Refuse やめよう、Reduse 減らそう、Reuse 再利用、Recycle 再資源化
    縦軸: 素材、構造、エネルギー、意識

   →エコ・カクメイを考えると?
    Refuse やめる(考え直す)に繋がることが重要と考え、
    これまでにない価値を提案することにし、
    マトリックス型発想法を使い、やめるためのサムネールスケッチを9個作成した。

  ・マトリックス型アイデア発想法
   マトリクス型アイデア発想法とは、マトリックス(表)を活用して、
   新しいアイデアを多く生み出すことを支援する強制発想法の一つ。

    発想のためのアプローチ 
     ・横軸と縦軸の項目を決めてマトリックスを作る
     ・マトリックスの各項目にアイデアを記入する。
     ・アイデアはつまらないものでもよいが、埋めることが重要

    マトリックスの例
     ・多様なユーザー(父、母、子ども、学生、身体の不自由な人)
     ・多様な場所(学校、自宅、居間、台所、オフィス、公園)
     ・多様な時間(年、季節、月、週、日、時刻)
     ・多様なビジネス視点(シーズ、ニーズ、ブランド、価値)
     ・多様な視点(文化、エコ、意識、趣味、目標、素材、構造) 

   http://kazkazdesign.blogspot.jp/2010/06/blog-post_13.html

 ▼3. 体験を視覚化するワークショップ
   これからのモノ作りワークショップ
   
   →ナカダイさんと協業
    Step1: 現状把握(工場内を調査・UXマップを作成)
        → エモーショナルな気づき
    Step2: グループワーク(マテリアル分析・スケッチドキュメンテーション)
        →ロジカルな気づき
    Step3: 制作
    Step4: 発表
  
   →東新さんとのワークショップ
    ・カルチャーセンタードデザイン
    ・デザインパターン
    ・ペーパープロトタイピング
    ・マイクロものづくり    

    Tsunagiワークショップ「動物とのエピソード体験による発想」
     ・グループでのブレインストーミング
     ・グループで「共通するエピソード」または「一番面白いエピソード」を1つ選ぶ。
     ・6つの方式からアイデアを発想
     ・ペーパープロトタイピング
     ・発表
     ・実制作

    ※ミラノで同じようにワークショップを実施した。

    http://kazkazdesign.blogspot.jp/2012/02/blog-post_24.html
 

 ▼4.体験とビジネスを考えるワークショップ

   ユーザーエクスペリエンスは、ビジネスと密接な関係があるが、
   これまでのユーザーエクスペリエンスの議論はともすると利用者の体験だけに、
   フォーカスした場合が多いかと思います。
 
   企業の商品戦略やサービス戦略のために、ビジネスとカスタマーの体験を、
   一つの視点で考慮することが重要です。
   ここでは、ビジネスモデル・キャンバスという手法を活用しながら、
   ビジネスとカスタマーの体験を一つの視点で考慮するワークショップを開催します。
  
   そのために、ビジネスモデルに詳しい、コンサルタントの福永光一氏をお招きし、
   ビジネスモデルやビジネス面でのお話やアドバイスをいただく。
  
   →当日の様子はこちらにて
   

 ▼5.体験と社会環境を考えるワークショップ

  社会環境を検討するためのデザイン
   →ソーシャルセンタードデザイン

   
  ・HCDとSCDとビジネスモデル

   社会環境視点(SCD)

   ユーザー視点(HCD)
    (対象とする顧客・顧客への価値の創造)

   ビジネス視点
    (顧客への価値を届ける・利益とコストを考慮する)

        ↓
   顧客の価値を意識したビジネスモデル
    ・対象とする顧客
    ・顧客への価値の創造
    ・顧客へ価値を届ける
    ・利益とコストを考慮する。

  ・SE(Social Environment)社会環境
   社会環境の構築ブロックには、
   社会や環境の動向、社会と環境に関連する顧客価値と、ビジネス価値を記述します
    →社会と環境は、顧客とビジネスに大きな影響があります。
     また、顧客の価値の中で、社会と環境における役割も大きくなります。
  
   社会環境とは、下記のような社会と環境を考慮します。
   ・サスティナブルな社会
   ・社会的な価値
   ・社会経済
   ・社会的な環境
   ・文化的な環境
   ・地域環境
   ・地球環境

インフォグラフィックスを通じて学ぶコンテンツデザイン

原田 泰(公立はこだて未来大学教授)

当日のスライド:http://www.gege-channel.com/20120504/

 ▼コンテンツデザイン
  →メッセージを自分のことばで表現し、人々が扱えるようにする。

  図とは、かたちで意図、意味を伝えることば。

 ▼インフォグラフィックス 
  図解のプロセス(観察→解体→再構成→表現→魅せる・反応)

 ・事例1
  うごくおもちゃのしくみ
     2年生向けのコミュニケーションデザイン演習

  ※基本的に手書きでやらせている。
   コンテンツの内容がよかったため、Illustratorで清書した。

  http://visual-design-2.blogspot.jp/

 ・事例2
  うごくおもちゃのしくみをさらに発展させて、
  動画として作成した。

  →博物館での展示をゴールとした。

  http://www.gege-channel.com/toys/
  

 ・事例3:
  ペーパーメディア・プレゼンテーション
  はさみや動物の要素を解体して
  授業の資料もインフォグラフィックスにした。

 ・事例4
  デジカメアニメ「食べる」
  パントマイムやストリーテリングの要素を取り入れた。

  http://jouhoukiso.blogspot.jp/2011/05/blog-post.html
  http://jouhoukiso.blogspot.jp/2011/05/52.html

 ・事例5
  シナリオ作成法
  ウルサン大学での事例
  観察からインフォグラフィックスを作成し、さらに新しいストーリーを作る。

  Expericnce
   Step1: 自らの体験をことばで語ってみる。
   Step2: その体験の中にある構造を発見する
      (構造とは、「たのしい」「うれしい」「かなしい」など、
       その経験の価値を生み出すメカニズムといってもよい)
   Step3: 発見した課題をダイアグラムとして視覚的に表現してみる。
   Step4: 視覚化した構造に新しい設定をあてはめてみる。
      (設定とは「世界観」「時代」「場所」
       「スケール(大きさ、スピード)「キャラクタ」など)
   Step5: 新たに生まれ変わった構造にもとづいてストーリーボードを作成
   Step6: ストーリーボードを利用して、新しい物語りをドラマティックに語ってみる。

デザインワークショップの故きを温ねて新しきを知る試み

上平崇仁(専修大学教授)

 ▼CONTENTS
  ・情報デザインのワークショップ的に学ぶ意味
  ・上平の取り組み、事例から5点紹介
  ・まとめ

 ▼なぜワークショップなのか?
  人は「言えば聞き、聞けば理解する」・・・わけがない。

  ・一切講義の限界
    講義の5ヶ月後には、「事実や主題=2.1% キーワード=29.1%」しか残らない・・・

  →学びはあまねく存在する。
   学びとは知識をためることではなく、社会的に構成するもの。

 
 ★「教え」られると、人は思考停止する。
   こうするんだよ、という指示が示されると、
   幼児も大人も「この道具は、このためにこう使うもの」という、
   機能的な固着を生み出してしまう。
   それ以外の使い方ができなくなる。
   (「まなびを学ぶ」苅宿/佐伯/高木 東京大学出版会2012)
  
 ▼ワークショップ
  講義など一方的な知識伝達のスタイルではなく、
  参加者が自ら参加・体験して共同で何かを学び合ったり、
  作り出したりする学びと創造のスタイル

  ・身体性
  ・協同性
  ・創造性
  ・共有性
  ・プロセス重視

 ▼「個人」と「他者との関わり」
  ワークショップに先生はいない。
  お客さんでいることはできない。
  はじめから決まった答えなどない。
  頭がうごき、身体も動く。
  交流と笑いがある。

 ▼ワークショップの分類
  (1)アート系、(2)まちづくり系、(3)社会変革系、(4)自然・環境系、
  (5)教育・学習系、(6)精神世界系、(7)統合系と大別
 
 ▼「ことばドリブン」だけでなく。
   ★語るための言葉/具体化のための表現
    ・・・対応付けは常に必要

   ★トラディショナルな造形基礎のエッセンスを、
    ワークショップ的な視点を加えて新しく解釈してみる。

 ▼「みんなでつくる」の、しくみをつくる。
   キット化することで、新しい接点をつくる。
   きっかけを持たなかった人々の、潜在的なパワーを掘り起こせる可能性

   事例:立方体の均等分割 / 空間思考のトレーニング/ 人力3Dプリンティング

 ▼いつかわかる、じわじわわかる、その場でわかる。

  ・いつかわかる
    「制約と創造性の関係」
    「あらゆる出来事はすべて立体的」「面白さは切り口次第」
    「役に立つことがすべてではないこと」

  ・じわじわわかる
    「仮説検証のサイクル」「同じ問題でも多様な解があること」
    「分解してみる視点」「逆算の必要性」

  ・その場でわかる
    「Illustratorのスキル」「手が介在する仕事の楽しさ」
    「”ぴったり”の心地よさと審美性」「モニタから実体化するうれしさ」

 ▼実例

 2. Color designワークショップ
   記憶の色見本帳
   それぞれの原風景の経験の中にある色をストーリー付きのカードにする。

 3. タイプフェイス神経衰弱
   基本的な書体を判別するゲーム

 4.OurLife in 20xx
   30年前の専修大学の写真を集めてきた。
   それを元に、30年後を想像してみた。

 5. IA Basic Learning Kit
   コンテンツカードをつないで情報設計の基本を学ぶ
   ※ネットイヤーの坂本さんが監修している。

 ▼ワークショップの限界
  ・やった気になりやすい割には、自身に繋がりにくい。
  ・ワークショップ中毒=温泉説(川島直)

 ▼まとめ
  ★過去の事例からは、「かわらない大事さ」が見える。
   アート / デザインの系譜を押さえる上でも重要。
   今の情報デザイン教育にもいろいろ展開出来そう

  ★デザインにおいて、ワークショップと実践は両論
   学びを活かすうえで、参加者も限界や問題を押さえた上で取り組みたいもの。

写真を使った価値マップによるサービスアイディア発想WS

安藤昌也(千葉工業大学准教授)

 ▼写真を使ったサービスアイディアのワークショップ
  →KA法を使って、写真でワークショップをした。
   KA法の最大の特徴は、たった一つの、
   どんなに小さな出来事にも価値があるという考え方にたっている。
 
   ・写真はフォトエッセイ
   ・黄色いのは未充足(desire)
  
 サービスデザインでのワークショップでは、 
 テーマ設定がキモになる。

 ▼写真を使ったサービスアイディアのワークショップ
  「安心、安全に備える」をテーマにフォトエッセイをした。
 
 
■サービスデザイン
 安藤先生は、スライドを使わず、
  ホワイトボードを使うという新しい手法・・・

 ▼サービスデザインの進展

   Service design
    →ニーズ→充足 ← 価値
   
    design for Service
    →欲求→実現 → 価値
 
    Co-Creation
    →意識→参画→価値 ← 機会 
    (これ自体がワークショップ)

 ▼サービスデザインのワークショップには下敷きがある。
  サービスデザイン.org

   AT-ONE(E N O T A)
   →5回にわけてワークショップをする。

   A Actor
   T Touch Points
   O Offering
   N Needs
   E Experience

   ※Oが大事
    O T Aが価値基盤デザイン
    E Nはサービス体験のデザイン

   ※Oをどうやって抽出するか、まだ決まっていない。

  
 ※最初のワークショップでは、伊藤園をテーマに「ブレイクする」という内容で実施した。

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