― プレミアム会員減少は、どの体験の崩れを示唆しているのか
近年、クックパッドは売上減少が続き、
その主因として「プレミアム会員数の減少」が挙げられています。
さらに公開情報からは、
- 連続減収
- プレミアム会員減少の明示
- 事業整理(周辺サービスの分割・終了)
- 人員削減の実施
といった構造的変化も確認できます。
ここで重要なのは、
これを「業績悪化」と捉えるか、「体験構造の変化」と捉えるかです。
私は後者として捉えたいと思います。
なぜなら、人間中心設計(HCD)の観点では、
売上は「価値が継続的に知覚された結果」だからです。
1. HCDの原則から見る「プレミアム会員減少」
ISO 9241-210(人間中心設計の国際規格)では、
システムは「利用状況の理解」から設計されるべきだと定義されています。
プレミアム会員減少とは、言い換えれば、
ある利用状況において、価値が知覚されなくなった
ということです。
したがって問いはこうなります。
- 利用状況は何か?
- その状況での成功体験は維持されているか?
- 代替手段は何か?
- 体験は連続的に改善されていたか?
2. 利用状況の再定義:料理アプリの本当のジョブ
レシピ閲覧は目的ではありません。
HCD的に見ると、ユーザーの本当の目的は以下です。
- 家族を待たせずに食事を出す
- 食材を無駄にしない
- 健康を維持する
- 料理ストレスを下げる
- 「今日何作る?」問題を解決する
つまり、レシピは手段。
ジョブは「生活の不安の解消」です。
もしこのジョブが、
- 動画プラットフォーム
- SNS
- 生成AI
- 献立アプリ
で代替可能になったなら、
プレミアムの存在意義は再定義を迫られます。
3. 体験ファネルの構造的弱化仮説
人間中心設計では、体験を連続した行動プロセスとして捉えます。
料理体験を分解すると:
- 検索する
- 選択する
- 調理する
- 成功体験を得る
- 再利用する
- 課金する
プレミアム会員減少が示唆するのは、
6の問題ではなく、3〜4の確率低下です。
もし成功体験が弱まれば、
成功体験減少
↓
習慣化しない
↓
価値が蓄積されない
↓
課金しない
という構造になります。
4. 検索UXの可能性:選択疲労と信頼性
公開情報では直接語られていませんが、
UGC型サービス特有の構造的課題があります。
- コンテンツ過多
- 品質ばらつき
- 類似レシピ氾濫
- 選択コスト増大
人間は選択肢が多いほど決定しにくくなります(選択のパラドックス)。
料理は失敗リスクを伴う行為です。
「美味しそう」ではなく、
「確実である」ことが重要です。
検索UXが信頼性を担保できなければ、
調理実行率は下がります。
5. 供給側UXという盲点
HCDは「すべてのステークホルダー」を対象にします。
クックパッドはUGC型。
つまり、
投稿者もユーザーです。
もし投稿者が
- 承認されない
- 伸びない
- 報酬が少ない
- 炎上が怖い
と感じていたら、良質供給は減少します。
供給減少
↓
成功体験減少
↓
課金価値低下
という二面市場の連鎖が起きます。
6. 組織縮小とUX改善速度
人員削減や事業整理は、財務的合理性がある一方で、
改善速度の低下リスクを伴います。
UXは継続的改善が命です。
改善速度低下
↓
体験の停滞
↓
ユーザーの期待との差拡大
↓
離脱
という遅延的崩壊が起こる可能性があります。
7. 因果ループで整理する
検索で迷う
↓
作らない
↓
成功体験減少
↓
習慣化しない
↓
課金しない
↓
売上減
↓
改善投資減
↓
検索改善遅延
この負のループが仮説として最も整合的です。
8. HCD専門家としての検証提案
感覚的議論ではなく、
設計可能な問いに落とします。
定量
- 検索→保存率
- 保存→調理率
- 調理→再訪率
- 解約前行動変化
定性
- 解約者インタビュー(意思決定瞬間)
- JTBD分析
- 料理失敗体験の深掘り
実験
- 検索結果に「失敗しにくさ」指標導入
- 献立完結型体験の設計
- 投稿者UX改善
9. 結論
クックパッドの売上減少は、
「時代遅れ」ではなく、
利用状況と価値知覚の再設計が追いつかなかった可能性
として理解できます。
HCDの視点では、
売上は症状
体験は原因
です。
そして原因は、
観察・検証・再設計が可能です。
衰退は不可避ではありません。
それは、再設計可能な構造問題です。
ということで、HCD視点で考えてみましたが、
いかがでしたでしょうか。
まぁ、そんなに簡単な問題でもない気もしますがねー。

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