― 日本のUX市場で「深く設計する」は本当に可能か? ―
Nielsen Norman Group の
State of UX 2026: Design Deeper to Differentiate は、
「UXは“深さ”で差別化せよ」と語っている。
では、日本市場でそれはそんなに簡単に実現できるのか?
今日は、
- 日本市場への当てはめ
- HCD専門家のポジション
- これから鍛えるべき具体スキル
この3点で整理してみる。
1. 日本のUX市場で「Design Deeper」は可能か?
正直に言うと、簡単ではない。
理由①:UXの役割がまだ“UI寄り”で止まりやすい
日本では、UX=画面設計、ワイヤー、UI改善
という理解で止まるケースが多い。
- 体験設計よりUI改善
- リサーチより実装スピード
- 戦略より制作効率
構造よりも“制作物”が評価されやすい文化がある。
理由②:UXが戦略レイヤーに入りづらい
欧米ではUXがプロダクト戦略に直結することが多い。
一方、日本では
- 事業戦略は経営層
- マーケはマーケ部門
- UXは制作部門
という分断構造がまだ残る。
つまり、
深く設計したくても、構造に入れないことがある。
でも、チャンスもある
逆に言えば、
- まだ“深いUX”をやれている企業は少ない
- 表層改善止まりの企業が多い
ということは、
本当に構造設計ができる人は希少価値が高い
ということでもある。
2. HCD専門家のポジションはどうなるか?
ここが一番重要。
HCDは「過去の資格」か?
結論から言うと、違う。
むしろ2026年以降は価値が上がる。
なぜなら、
AIや高速開発の時代だからこそ
- 本当にユーザーを理解している人
- 仮説検証の設計ができる人
- 構造的に課題を捉えられる人
が不足するからだ。
ただし、資格だけでは足りない
HCD専門家が弱くなりがちなポイントはここ。
- 手法は知っている
- プロセスは語れる
- でも事業成果にどう結びつくかを語れない
2026年型HCD専門家に必要なのは、
「人間中心」×「事業中心」
の両立。
HCD専門家の進化系ポジション
今後狙うべき立ち位置は、
- UXストラテジスト
- プロダクトディスカバリー担当
- UX×データの橋渡し役
- AI導入の倫理設計担当
単なるリサーチャーではなく、
構造設計者としてのHCD専門家
ここがポジション。
3. これから鍛えるべき具体スキル
ここが一番実践的な話。
① システム思考
画面単位ではなく、
- 組織
- ビジネスモデル
- サービスエコシステム
まで含めて設計できる力。
おすすめ強化方法:
- サービスブループリント
- バリューチェーン分析
- ビジネスモデルキャンバスとの接続
② データリテラシー(定量理解)
日本市場では特に重要。
UXが“感覚論”と見なされないために、
- GA4理解
- A/Bテスト設計
- CVR改善のロジック理解
- KPI設計
ここは避けて通れない。
UX×ウェブ解析が武器になる。
③ AIリテラシー(設計視点)
コーディングではない。
必要なのは、
- AIの限界理解
- ハルシネーションのリスク設計
- ユーザーコントロール設計
- 説明可能性のデザイン
AIを入れる勇気より、
入れない判断ができる力。
④ ファシリテーション力
日本市場で深く設計するには、
- 経営層
- エンジニア
- マーケ
- 営業
を巻き込まないと無理。
つまり、
対話設計能力がUXの武器になる
ワークショップデザインは、
今後さらに重要になる。
⑤ ビジネス言語化能力
UXをこう語れるか?
- 売上にどう影響するか
- LTVにどう効くか
- 解約率にどう効くか
- 顧客満足度と利益の関係
「良い体験」ではなく
「収益に接続する体験」
を語れるかどうか。
結論
日本で「Design Deeper」は簡単ではない。
でも、
- 表層改善で止まっている市場
- AIハイプに振り回されている現場
- UXの戦略化が遅れている企業
が多いからこそ、
構造から設計できるUX人材は希少
になる。
HCD専門家は終わらない。
ただし、
進化しなければ埋もれる。
これからのUXは、
- 深さ
- 横断力
- 事業接続力
この三つの掛け算。
2026年は、
「作れる人」ではなく
「構造を設計できる人」
が選ばれる時代だ。

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