State of UX 2026から考える 2026年2月25日

― いまUXデザイナーに求められている“深さ”とは何か ―

先日、
Nielsen Norman Group が公開した
State of UX 2026: Design Deeper to Differentiate」を読んだ。

率直に言うと、派手な未来予測ではない。
むしろ、冷静で、現実的で、そして少し厳しい。

キーワードは一つ。

Design Deeper to Differentiate
― 深く設計せよ。そこにしか差別化はない。

今日は、UXデザイナー視点でこの内容を整理してみたい。


1. UX市場は“落ち着いた”。でも楽になったわけではない。

2023〜2025年は混乱の時代だった。

・AIブーム
・レイオフ
・採用凍結
・UX不要論の台頭

正直、現場の空気も不安定だった。

2026年に入り、市場は安定傾向にある。
ただしそれは「楽になった」という意味ではない。

むしろこうだ。

  • ジュニアには厳しい
  • 表層的なUIデザイナーは淘汰されやすい
  • 成果を語れないUXは評価されない

求められているのは、
アウトプットではなくアウトカムを出せる人材

ここが大きな転換点だと思う。


2. UIはもはや差別化にならない

デザインシステムが整備され、
AIがUIを生成できる時代になった。

綺麗なUIを作ること自体は、
以前よりもずっと“容易”になっている。

つまり、

画面が整っているだけでは、もう価値にならない。

UXの差別化は、
ビジュアルではなく「構造」と「意味」に移った。

  • どんな体験を設計しているのか
  • なぜその体験が必要なのか
  • それはどんな行動変容を起こすのか
  • ビジネスにどう貢献するのか

ここまで語れないと、戦えない。


3. AIブームは終わり、“AI疲労”が始まった

ここが個人的に一番重要だと思ったポイント。

数年にわたるAIハイプの結果、

  • 何でもAI
  • とりあえずAI
  • AIがUXを置き換える

という極端な議論が横行した。

しかし今は違う。

ユーザー側にも“AI疲れ”が起きている。

  • 何をするにもAI提案
  • 自動化の押し付け
  • 説明のないブラックボックス
  • 誤作動時の責任不明確

結果として、

AIがあること自体が価値ではない

という地点に戻ってきた。

これは健全な揺り戻しだと思う。


4. 2026年型UXデザイナー像

この記事が示しているのは、

「適応できるジェネラリスト」

という像だ。

  • リサーチもできる
  • IAも設計できる
  • UIも理解している
  • ステークホルダーと対話できる
  • ビジネスKPIを語れる
  • AIを使いこなせる

一つの専門だけではなく、
文脈を横断できる人。

つまり、

UXを“点”ではなく“線と面”で捉えられる人

これが2026年の差別化要因になっている。


では、AI UX設計のポイントは何か?

ここからは、記事を踏まえた実務視点で整理してみる。


① AIは主役ではない。あくまで「背景技術」

AIを前面に出す設計は、ほぼ例外なくノイズになる。

重要なのは、

  • ユーザーの目的達成が自然に加速しているか
  • AIの存在を意識せずに成果が出せるか

AIは「機能」ではなく「支援」。


② 透明性(Explainability)

  • なぜその提案なのか
  • どんなデータを元にしているのか
  • 誤っていたらどう修正できるのか

ブラックボックスは不安を生む。

信頼はUXの根幹。


③ ユーザーのコントロールを奪わない

AIが勝手に決める設計は、
短期的には楽でも長期的には不信を生む。

  • オプトアウトできるか
  • 手動に戻せるか
  • 修正可能か

“支配”ではなく“補助”。


④ エラー体験を設計する

AIは必ず間違える。

問題は、
間違えたときにUXが崩壊するかどうか。

  • リカバリーパス
  • 明確な説明
  • 代替手段

ここを設計できるかどうかがプロと素人の差。


⑤ AI導入の問いを間違えない

一番重要なのはこれ。

×「AIをどう使うか?」
○「この体験にAIは本当に必要か?」

不要なら入れない。

勇気ある“非導入”もUX設計の判断。


結論

State of UX 2026は、
未来の派手な予測ではない。

むしろこう言っている。

UXは原点回帰する。
しかし要求レベルは上がる。

  • 表層ではなく構造へ
  • UIではなく意味へ
  • AIではなく体験へ
  • アウトプットではなく成果へ

2026年のUXは、

「深く考えられる人」が勝つ。

そしてそれは、
派手な技術よりも、
地味な思考力と設計力の積み重ねだ。

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