― いまUXデザイナーに求められている“深さ”とは何か ―
先日、
Nielsen Norman Group が公開した
「State of UX 2026: Design Deeper to Differentiate」を読んだ。
率直に言うと、派手な未来予測ではない。
むしろ、冷静で、現実的で、そして少し厳しい。
キーワードは一つ。
Design Deeper to Differentiate
― 深く設計せよ。そこにしか差別化はない。
今日は、UXデザイナー視点でこの内容を整理してみたい。
1. UX市場は“落ち着いた”。でも楽になったわけではない。
2023〜2025年は混乱の時代だった。
・AIブーム
・レイオフ
・採用凍結
・UX不要論の台頭
正直、現場の空気も不安定だった。
2026年に入り、市場は安定傾向にある。
ただしそれは「楽になった」という意味ではない。
むしろこうだ。
- ジュニアには厳しい
- 表層的なUIデザイナーは淘汰されやすい
- 成果を語れないUXは評価されない
求められているのは、
アウトプットではなくアウトカムを出せる人材。
ここが大きな転換点だと思う。
2. UIはもはや差別化にならない
デザインシステムが整備され、
AIがUIを生成できる時代になった。
綺麗なUIを作ること自体は、
以前よりもずっと“容易”になっている。
つまり、
画面が整っているだけでは、もう価値にならない。
UXの差別化は、
ビジュアルではなく「構造」と「意味」に移った。
- どんな体験を設計しているのか
- なぜその体験が必要なのか
- それはどんな行動変容を起こすのか
- ビジネスにどう貢献するのか
ここまで語れないと、戦えない。
3. AIブームは終わり、“AI疲労”が始まった
ここが個人的に一番重要だと思ったポイント。
数年にわたるAIハイプの結果、
- 何でもAI
- とりあえずAI
- AIがUXを置き換える
という極端な議論が横行した。
しかし今は違う。
ユーザー側にも“AI疲れ”が起きている。
- 何をするにもAI提案
- 自動化の押し付け
- 説明のないブラックボックス
- 誤作動時の責任不明確
結果として、
AIがあること自体が価値ではない
という地点に戻ってきた。
これは健全な揺り戻しだと思う。
4. 2026年型UXデザイナー像
この記事が示しているのは、
「適応できるジェネラリスト」
という像だ。
- リサーチもできる
- IAも設計できる
- UIも理解している
- ステークホルダーと対話できる
- ビジネスKPIを語れる
- AIを使いこなせる
一つの専門だけではなく、
文脈を横断できる人。
つまり、
UXを“点”ではなく“線と面”で捉えられる人
これが2026年の差別化要因になっている。
では、AI UX設計のポイントは何か?
ここからは、記事を踏まえた実務視点で整理してみる。
① AIは主役ではない。あくまで「背景技術」
AIを前面に出す設計は、ほぼ例外なくノイズになる。
重要なのは、
- ユーザーの目的達成が自然に加速しているか
- AIの存在を意識せずに成果が出せるか
AIは「機能」ではなく「支援」。
② 透明性(Explainability)
- なぜその提案なのか
- どんなデータを元にしているのか
- 誤っていたらどう修正できるのか
ブラックボックスは不安を生む。
信頼はUXの根幹。
③ ユーザーのコントロールを奪わない
AIが勝手に決める設計は、
短期的には楽でも長期的には不信を生む。
- オプトアウトできるか
- 手動に戻せるか
- 修正可能か
“支配”ではなく“補助”。
④ エラー体験を設計する
AIは必ず間違える。
問題は、
間違えたときにUXが崩壊するかどうか。
- リカバリーパス
- 明確な説明
- 代替手段
ここを設計できるかどうかがプロと素人の差。
⑤ AI導入の問いを間違えない
一番重要なのはこれ。
×「AIをどう使うか?」
○「この体験にAIは本当に必要か?」
不要なら入れない。
勇気ある“非導入”もUX設計の判断。
結論
State of UX 2026は、
未来の派手な予測ではない。
むしろこう言っている。
UXは原点回帰する。
しかし要求レベルは上がる。
- 表層ではなく構造へ
- UIではなく意味へ
- AIではなく体験へ
- アウトプットではなく成果へ
2026年のUXは、
「深く考えられる人」が勝つ。
そしてそれは、
派手な技術よりも、
地味な思考力と設計力の積み重ねだ。


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