前の記事では、安藤研究室展から見えてきた
「作り手の願い」というUX設計思想について整理しました。
ここで重要なのは、この考え方が
従来のUXを否定するものではなく、
UXの射程を広げる提案
だということです。
UXの世界では長く、
・ユーザー理解
・ユーザーの課題
・ユーザーの体験
を中心に設計が行われてきました。
これは今でもUXの基本です。
しかし今回の研究が示しているのは、
UXをもう一段上の視点から考える可能性です。
それは
「この体験を通して、人はどう変わるのか」
という問いです。
つまりUXを
・便利さ
・操作性
・効率
といった観点だけでなく、
人の変化
という視点から設計することです。
この視点を持つことで、UXデザインは
・機能設計
・UI設計
を超えて、
人間の理解に関わるデザイン
へと広がります。
UXは「行動」だけでなく「認識」を扱う
この研究の面白いところは、
UXを
行動のデザイン
ではなく
認識のデザイン
として捉えている点です。
つまり
ユーザーに何かをさせるのではなく、
ユーザーが
・気づく
・見方が変わる
・理解が変わる
といった体験を設計する。
これはUXの視点を大きく広げる考え方です。
UXは「機能」から「意味」へ
もう一つの重要な視点があります。
それは
UXが
機能設計から意味設計へ広がる
ということです。
従来のUXでは、
・何ができるのか
・どれくらい便利か
・どれくらい早く使えるか
といった点が重要でした。
しかし「作り手の願い」という視点では、
その体験は
ユーザーにとってどんな意味を持つのか
が重要になります。
つまりUXは、
操作のデザインから
意味のデザインへ
広がっていると言えるでしょう。
UX研究史の中で「作り手の願い」はどこに位置するのか
ここからは少し視点を広げて、
UX研究の歴史の中で
この理論がどこに位置するのか
を整理してみます。
UXは実は、いくつかの思想の流れの中で発展してきました。
① 人間工学とユーザビリティ
UXの最初のルーツは、
人間工学(Human Factors)
です。
ここでは主に
・操作ミスを減らす
・理解しやすくする
・安全に使えるようにする
といった
人と機械の関係
が研究されていました。
その後、
ユーザビリティ
という概念が登場します。
ドン・ノーマンなどの研究によって、
・わかりやすい
・学びやすい
・効率的
といった指標が整理されました。
この時代のUXは、
使いやすさの設計
が中心でした。
② 人間中心設計(HCD)
その後、UXは
人間中心設計(Human Centered Design)
へと発展します。
ここで重視されたのは、
・ユーザー理解
・コンテキスト理解
・ユーザー調査
です。
つまりUXは
ユーザーの生活の中で理解するもの
になりました。
UXデザインはここで、
・ユーザーインタビュー
・エスノグラフィ
・ペルソナ
といった手法を取り入れます。
UXは
「ユーザーを理解するデザイン」
へと進化しました。
③ サービスデザイン
その次に登場したのが、
サービスデザイン
です。
ここではUXは
・サービス全体
・顧客体験
・タッチポイント
といった
体験の連続
として考えられるようになります。
つまりUXは
・画面
・UI
だけではなく、
サービス体験
へと広がりました。
④ 行動デザイン
さらに近年では
行動デザイン
という分野が発展しました。
ここでは
・行動経済学
・ナッジ
・習慣形成
などを使って、
ユーザーの行動変化
を設計する研究が進みました。
例えば
・健康アプリ
・学習アプリ
・節約アプリ
などです。
UXはここで
行動変容の設計
へと広がります。
⑤ 作り手の願いUX
そして今回の研究は、
UXをさらに一歩進めています。
それが
認識変容のUX
です。
つまり
ユーザーが
・どう行動するか
ではなく
どう理解するか
を設計する。
この視点は、
UX研究史の流れで見ると
次のような位置になります。
人間工学
↓
ユーザビリティ
↓
人間中心設計
↓
サービスデザイン
↓
行動デザイン
↓
認識変容UX(作り手の願い)
つまりこの研究は、
UXを
人間理解のデザイン
として再定義しようとしているように見えます。
🎯 結論
今回の研究展が示していたのは、
UXデザインの次の可能性でした。
それは、
UXを
・UI
・機能
・行動
だけで考えるのではなく、
人の認識と意味の変化
として捉えることです。
AIによって
「作ること」が簡単になる時代に、
UXデザイナーの価値は
何を作るか
ではなく
どんな意味の体験を作るのか
に移っていくのかもしれません。
そしてそのとき、
UXデザイナーは
単なる設計者ではなく、
人の理解を支える庭師
のような存在になるのだと思います。
まだちょっと続きます。

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