先日、音楽ニュースサイト「ナタリー」をスマートフォンで閲覧していたとき、少し気になる体験をしました。記事を開いた瞬間、画面の大部分を覆う広告が表示され、元の記事がほとんど見えない状態になっていたのです。閉じるボタンはあるものの非常に見つけにくく、記事にたどり着けませんでした。
この体験を通して、改めて「広告とUXの関係」について考えさせられました。UXデザイナーの視点から見ると、このようなUIは単に「広告が邪魔」という話ではなく、いくつかの構造的な問題が見えてきます。
① 🎯 ユーザーの目的とサイトの目的のズレ
ニュースサイトに訪れるユーザーの目的は非常にシンプルです。
記事を読むこと。
しかし今回のような全画面広告は、ユーザーの目的の前に広告表示を強制する構造になっています。
つまり、
ユーザーの目的
→ 記事を読む
サイト側の行動
→ まず広告を見せる
というズレが生まれています。
UXの基本は「ユーザーの目的を最短距離で達成できるようにすること」です。その観点からすると、この体験はかなり遠回りを強いるUIと言えます。
② 🚫 コンテンツを遮断する広告モーダル
今回表示されたのは、いわゆるインタースティシャル広告(全画面広告)です。
この形式の広告は広告効果が高いと言われていますが、UXの観点では問題を生みやすい広告でもあります。
特に次のような問題が起きます。
・記事コンテンツが見えない
・閉じるボタンが見つけにくい
・ユーザーの行動を強制的に止める
今回のケースでは、この3つが同時に起きていました。
UXの世界では、このようなUIは「ユーザーの行動を妨げるデザイン」として問題視されることがあります。
③ 📊 アクセス解析の観点から見ても疑問
もう一つ気になったのは、アクセス解析の観点です。
もしユーザーが
記事クリック
↓
広告表示
↓
すぐ閉じる
↓
離脱
という行動を取った場合、セッションの質はかなり低くなります。
場合によっては
・直帰率の増加
・平均滞在時間の低下
・ページ閲覧数の減少
といった指標に影響が出る可能性があります。
広告インプレッションは増えても、サイト全体のエンゲージメントは下がる可能性があります。UXとKPIの両面から見ても、あまり良い設計とは言えないかもしれません。
④ 🌍 実は世界中のメディアで起きている問題
この問題はナタリーだけの話ではありません。海外メディアでも同じ議論が何度も起きています。
ニュースサイトではよく
・全画面広告
・広告ブロッカー検知
・スクロール遮断広告
といった広告手法が使われます。
しかしモバイルでは画面が小さいため、広告がユーザー体験を圧迫しやすい傾向があります。
GoogleもモバイルUXを重視するようになり、「コンテンツを隠す広告」は検索順位に影響する可能性があると明言しています。
⑤ 💰 広告収益とUXのジレンマ
もちろんメディア運営には広告収益が必要です。広告を掲載すること自体は自然なことです。
問題は
広告の存在ではなく、広告の出し方です。
UX的に比較的ストレスが少ない広告には、次のようなものがあります。
・記事途中広告
・ネイティブ広告
・スクロール連動広告
これらはコンテンツの流れを完全には遮らないため、ユーザー体験を壊しにくい設計です。
⑥ 🧠 UXデザイナーとして感じたこと
今回の体験を通して感じたのは、広告設計が「ユーザー体験」よりも「広告表示数」に寄ってしまっている可能性です。
短期的には広告のインプレッションが増えるかもしれません。しかし長期的には
・ユーザーのストレス
・ブランドへの印象低下
・離脱の増加
といった形でメディアの価値を下げる可能性もあります。
UXの視点から見ると、広告は「ユーザー体験の敵」である必要はありません。本来はコンテンツと共存できる形で設計できるものです。
ニュースメディアにとって最も重要なのは、やはり「記事を読む体験」です。その体験を壊さない形で広告を設計することが、これからのメディアUXには求められているのではないかと思います。


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