
1. 本の紹介
『「専門家」以外の人のためのリサーチ&データ活用の教科書』は、マーケティングにおけるリサーチとデータ活用の重要性を解説した書籍です。著者は20年以上P&Gでリサーチとデータ分析を担当し、数々の成功事例を生み出してきた経験を基に、本書を執筆しています。この本では、企業のマーケティング戦略や商品開発に役立つリサーチの方法論を解説し、データをどのように活用すべきかを「専門家以外」の人々にも理解しやすい形で提供しています。特に、P&Gでの「レノア」や「ファブリーズ」などの製品開発のストーリーを交え、リサーチの実践的な活用法を紹介しています。
2. 感想と主張
本書を読んで、リサーチとデータ分析の持つ力を再認識しました。著者は、リサーチとデータ活用が単なる数値やデータの収集にとどまらず、ビジネス上の問題解決にどれほど直接的に貢献するかを強調しています。特に印象的だったのは、P&Gでの「レノア」の開発ストーリーです。市場が縮小していた柔軟剤市場において、「洗濯物を柔らかくする」という枠組みから抜け出し、「臭いを防ぐ」という全く新しい価値提案をすることで、マーケットのパラダイムをシフトさせた点が非常にインスピレーショナルでした。このような成功事例を通じて、データを活用することが単なる数値の分析に留まらず、マーケティング戦略そのものを変革する力を持つことを実感しました。
主張としては、データの活用は「結果を出すために行う」べきであり、無駄に終わるリサーチや分析を避けるためには、事前に明確な目的を設定し、それに向かって進むことが重要だということです。データがどんなに豊富でも、それがビジネスにどう活かされるかがわからなければ、意味がないという点に共感しました。
3. 要約
本書は、リサーチとデータ活用の全プロセスを詳述しており、以下の8章に分かれています。
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序章では、リサーチとデータ活用の重要性が紹介され、ビジネス上の問題解決にどうつなげるかが説明されています。
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第1章は「もったいないリサーチ」の防止に焦点を当て、目的が定まらない、発見を求めない、使い方がわからないといったケースを紹介し、それぞれの改善方法を提示しています。
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第2章は戦略的なリサーチとデータ活用について、アイデアの出し方や、データ分析を行う前に必要な戦略思考を深掘りしています。
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第3章では、ビジネス上の目的を明確にすることの重要性を説明し、目的が不明確なリサーチがいかに役に立たないかを事例を通じて解説しています。具体的には、SNS分析ツール導入に関する目的明確化の事例が紹介されています。
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第4章はリサーチのデザインに関して、どのように問題解決につなげるリサーチを行うか、ダブルダイヤモンドプロセスや、イノベーションのアイデア出しについて詳述しています。
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第5章は「ギャップ=問題」を特定し分析する方法について説明しています。ビジネス課題にたどり着くためのステップとして、KPIを活用した分析手法が紹介されています。
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第6章ではビジネス課題の設定方法を、理由や背景を探る手法と共に紹介し、特に「ボールド」のリニューアル事例が具体的なアプローチとして取り上げられています。
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第7章は仮説を広げるためのリサーチ&データ活用方法を紹介し、ファブリーズの成功事例などを通じて、デザイン思考やオープンイノベーション的なアプローチを解説しています。
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第8章は最適な判断基準を設定し、データ分析をどのように絞り込んでいくか、メリットとデメリットを議論し、最終的な判断を下すためのプロセスを紹介しています。
4. 問題提起
本書で紹介された数々の成功事例は非常に有益でしたが、一方で現代においては、データ活用の方法がますます複雑化していることも事実です。特にビッグデータやAIを活用したデータ分析が普及する中で、企業がリサーチにどれだけ投資しても、それが確実にビジネスの成果に結びつくとは限りません。問題解決のためには、データ収集や分析だけでなく、それをどのように使うか、ビジネスのニーズにどう対応させるかが決定的に重要です。ここでの課題は、技術が進化しても、人間の直感や経験、そして目的意識が常にリサーチとデータ活用において中心にあるべきだということです。
5. まとめ
本書を通じて、リサーチとデータ活用がどれほど強力なツールであるかを深く理解できました。特に、P&Gでの事例を通して、リサーチが単なる情報収集ではなく、ビジネスを成功に導くための重要な手段であることが強調されています。リサーチを戦略的にデザインし、それを問題解決にどう活用するかを意識することが、今後のビジネスの成否を分ける鍵となります。この本は、データを活用して新たな発見を生み出す力を育むための大きな一歩となると思います。


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