昨年のお話となってしまうのですが、
質的調査法のひとつであるM-GTAのワークショップが、
ヒューマンインターフェース学会にて行われたので、
参加してきました。

学校などの授業でKA法という分析手法の講師をすることがあるのですが、
その元ともいってもいいM-GTAを知らないといけないなぁと思っていたのですが、
GTA自体を学ぶ場が少なく、今回やっと機会に恵まれることになりました。

会場は芝浦工業大学、
広くて綺麗な大学です。

講義

▼本日のアウトライン
 講師はおなじみの安藤先生です。
「なれは必要だが、概念を理解しておく必要がある。
 GTAの場合、立場は忘れてグループワークしてください。」
 とのことです。

▼質的分析とはどういうものか?
 
 人間の活動を工学的にアプローチするために、
 もっと現実的に行っていくために質的研究が発展してきた。

 ビックデータ分析も場合によっては質的研究と呼ばれることもあるが、
 あくまでも人間が調査道具となって現象を捉えて分析することが質的研究

 そのなかでほぼ中心的になるのがGTA
 GTAのなかでもやり易さを追求したのが、M-GTAやSCAT(4ステップコーディング)

 ★参考:安藤先生のKA法の論文(インターフェース学会)

 ・質的研究とはなんなのか?
  →仮説を立案するアプローチ

 ・質的とは?
  →インタビューデータが中心だが、写真や舞踊なども含まれる。
 
 ・質的分析の基本的な考え方
  →単純に考えると、当事者の行っている文脈を細分化して、
   コンテクストを分析して再構築する方法。
   具体的なものを抽象的に圧縮していく。

 ・量的調査と質的調査のプロセス比較
  →定量的な調査は段階的に行っていくアプローチ、
   定性的な研究アプローチは段階的にではなく、
   徐々に明らかになっていくのが特徴。

    データを取得→仮説→分析→データを再度取得

  ★リサーチクエスチョン
   →これがないとM-GTAを進められない。

 ・GTAで作るべき理論
  →次を予測するための仮説理論

▼GTAの基本的な考え方

 ・GTAとは?
  →本家はStrauss & Glasser が開発した研究手法(分析手法ではない)
   
   ・研究領域に密着した理論を生成しようとする方法(領域の限定)
   ・最終目的は理論の構築にあること

 ・GTAにおける「理論」とは
  →構造とプロセスを把握し、
   どのようにして人の相互行為や出来事が起こるかを説明するとともに、
   今後何が起きるか捉えようとするもの
 
   ★研究者が道具であり、研究者が積極的に解釈することが重要。
    (こう思うけど私は自身がないわ、ではだめ)
    
 ・GTAにおける理論の構造
  →KJ法で理論を構築していく。

 ・GTAの基本的なプロセス

  1.切片化とラベル付け(脱文脈化)※オープンコーディング
    →ラベル(概念)
 
  2.カテゴリー化
  3.カテゴリー関係の検討
    →軸足コーディング(KJ法みたいなもの)
 
  ※なぜ切片化するのか?
    →いったん離れて俯瞰するため。

  4.カテゴリー関係の構成
    →選択コーディング

  5.ストーリーラインの執筆

 ・GTAは質的分析法? 研究法?
   →GTAの主眼は理論生成のための分析法。
    だが、適切な理論生成のための調査法として、
    理論的サンプリングという考え方を示している(理論的飽和を目指す)

 ・GTAの原則
  
  1. Grounded on data
   →データに基づいた分析であること
    ・理論的サンプリング
    (例:インタビュー、ただし本家ではインタビュー後にすぐに分析)

    ・継続的比較分析(絶えざる比較法)※GTAと置き換えてもいいくらい重要。
 
    ・データ収集は理論的飽和に至るまで行うこと。
     →理論のため、ある程度の安定性が必要。

  2. 生データよりも生成した概念の方が優位である。
   →重要なのであとで説明。

  3. 分析結果は生成した概念と概念間お関係、
   概念の意味する具体例を示すデータの例示だけで表現する。
   →GTAは抽出した理論のみで表現する。

 ・GTAの理解(1)Grounded on dateとは?
  →データを元にオープンコーディングし、「データそのものに語らせる」ことが基本    
   
 ・GTAの理解(2)Coding & retrievalとは?
  →いつでもコードの元となったデータに戻れることを確保しておくこと、
   管理しておくこと。

 ・GTAの理解(3)理論的サンプリングとは?
  →データ収集とデータ分析を交互に行うことが基本。

 ・GTAの理論(4)継続的比較分析とは?
  →GTA本家は「脱文脈法と理論家作業を行う」
   ※結構属人的な部分がある。

   コーディング作業段階
    (1)データ内の比較
       ※これが重要で、これが出来るようになるとGTAが出来るようになる。

    (2)新しいデータとの比較
      →後で取得したデータとの比較

   理論家作業段階
   →研究者自身が考えた架空の状況との比較で、データやカテゴリー、
    複数のカテゴリー間の関係を検討する。

   ・近い比較:よく似た状況を想定
   ・遠い比較:無関係な状況を想定
   ・裏返し:データと反対の状況を想定

    ※そのためにディメンションとプロパティを使う。

  GTAの理解(5) 理論的飽和とは?
   →M-GTAとの比較で話したほうがわかりやすいので、後半へ。

▼M-GTAとは?

  ・3種類のGTA
  
  (1)オリジナル版
    Glaser & Straussによって考案
    ただしGlaserは量的な研究をしたく、Straussはシンボリック相互作用論
    なので喧嘩した。

  (2)ストラウス・コービン版
    データのリッチさで切片化を変化。方法が少し明確に。
    アメリカで行われるのはほとんどがこちら。

  (3)修正版GTA(M-GTA) 
    木下さんが提案した日本発の方法。
    切片化しない。文脈を含む具体例として扱う。方法が明確。
     ※基本はストラウス・コービン版がベース。
     ※切片化しない危険性もあるが、それを方法論で補う。

 ・M-GTAとは
  →そんなにおっきな理論は目指さない、研究目的との関連性に基づくこととし、
   明確な分析手順を定めた(木下,2003:西條,2007)

   オリジナル版で示された基本特性の継承
    ・理論生成への志向性
    ・grounded on data の原則
    ・経験的実証制(データ化と感覚的理解)
    ・応用が検証の立場(結果が実践の現場で使えるように還元すること)

   オリジナル版の課題点の活躍
    ・コーディング方法の明確化(分析プロセスの明示)
    ・意味の深い解釈
    ・フィールドワーク型ではなく、面接型調査(インタビューを前提に)

    ※インタビューじゃないといけないの?
     →会話分析などではやりにくい。

    ※M-GTA理論的サンプリングは前提はしていないが、
     安藤先生的にはある程度はやったほうがいい(スライド44)

  ・M-GTAが適した研究領域
   →人間のある動態を説明できる理論が得意(看護、教育、医学)
    ・人間と人間が直接的にやりとりする社会的相互作用に関する研究領域
    ・ヒューマンサービス領域
    ・研究対象とする現象がプロセス的正確を持っているもの

  ・GTAとM-GTAの違い
   研究する「人」を重視している。
   →方法論的限定というマジックワードがある

    コーディングの方法がGTAと違う:切片化しない
     →M-GTAコーディングにはこだわってない、
      分析マークシートを使うが、使いにくいので今回は使わない。

  ・M-GTAの分析を行う際の最も重要な点   
   →分析テーマは収集後に確定する。
    データ収集後にデータの範囲を固定する。

  ・研究テーマと分析テーマ
   →研究目的やリサーチクエスチョンは比較的大きなテーマ。
    分析テーマは、得られたデータからgrounded on dataの分析が
    しやすいところまで絞り込んだもの。
 
  ・質的研究に向いている研究テーマの設定
    →視点提示型の研究にする   
    →対象者の主観的な思いを扱う

  ※切片化しすぎると現実から離れすぎてしまうの
  ※M-GTAに適していないもの→人間の相互行為がないもの、
   ある程度時間が伴ってないとだめ

▼M-GTAの分析法

 ・M-GTAの実施手順
  1.研究テーマの設定
  2.分析テーマの設定&分析焦点者の設定
  3.データ収集
  4.分析ワークシートの作成
  5.概念と概念の個別的相互関係の検討
  6.カテゴリーの生成(KJ法みたいなもの、軸足コーディング)
  7.カテゴリー相互の関係とコアカテゴリーを中心とした全体のまとまりの検討
   (KJ法でいうところの、グルーピング同士の関係を見る)
  8. 結果図とストーリーラインの作成

 ・M-GTAのコーディングのイメージ 
  段階的にコーディングするのではなく、研究者の選択的判断で解釈を進める
   ※データと一定の距離を取る。

  ※GTAはシステマティック。

 ・M-GTAの概念生成法 オープンコーディング
  データの解釈から直接概念(分析の最小単位)を生成
   ・GTAのラベル、プロパティ、ディメンジョン、コンディションなどの用語は使用しない
   ・簡単に概念にしない。多角的に解釈を検討する。
    ※(試行錯誤する)最初は個人でやって、それからグループで共有
   ・1つの概念で一定の現象の多様性を説明できること(広めに)

  データの切片化はせず、分析テーマを照らして中心となる発話を、
  コンテキストを含んだ形で取り上げる。

  分析テーマと分析焦点者から具体的に解釈し、分析マークシートに記入し、
  解釈にフィットした概念名をつける。
   ※徐々に近づけていく

 ・データと概念の関係
  分析中のデータでまず概念を作って、
  そのあとに未分析及び今後収集するデータで概念を見る。
  

お昼ご飯

お昼は知り合い数名と学食へ。

思考発話法でユーザリビティを検証しながらコーヒーを買う安藤先生。

M-GTAの分析演習 ワークショップ

午後はグループで実際にインタビューデータをM-GTAにて分析するワークショップ。

▼分析ワークシート
 ・分析ワークシートはM-GTAの必要要件。
  すべての概念でワークシートが必要。
 ・1概念、1ワークシート
 ・ワークシートは4つの項目がないといけない
   (概念名、定義、バリエーション、理論的メモ)

 ★今日のポイント
  ・分析テーマの設定の考え方
  ・オープンコーディングの基本的な方法

 ※質的研究をしたことない人は俯瞰できなくて、
  細かいところに目がいきがち。

▼演習(1)分析テーマを設定する。

 ・チームの分析テーマ
 →車を買い替える時の価値基準(ポイント)と購入後の満足度に影響を与えるものは何か?

 ※プロセスとか関係性を入れるといい。
 ※インタビューデータを要約するのではなくて、「概念」「背景」を考える。
 ※質的研究は妥協はゆるさない、とことん追求する。

▼演習(2)オープンコーディング作業
  ※言葉の言い替えではだめ。

▼演習(3)オープンコーディング:概念抽出の思考錯誤
  ※概念名は名詞にするといい。

発表

▼演習(4)継続的比較
 二人めのデータと比べてみる。
 ※M-GTAでは比較するということが大事。

■懇親会
 特に懇親会の設定はなかったので、
 安藤先生を含めて数名で軽く。