7月3日に行われたHCD-Netサロン「マーケティングとUXデザイン」に参加してきました、
普段は接点があるようでないマーケティングとUXということで、
早々に募集定員も満席になってしまう人気でした。
日時:2012年7月3日(火) 19:00~21:00
場所:クリエイティブスペース amu(東京 恵比寿)
パネラー:高広伯彦氏(スケダチ代表)
安藤昌也氏(千葉工業大学 准教授/HCD-Net理事)
長谷川敦士氏(コンセント代表/HCD-Net理事)
イントロダクション
長谷川さん
マーケティングとUXデザインという視点で、
広告業界とUX業界の接点があやふやな状態だったりもするので、
スケダチの高弘さんに登壇いただき、
UXデザインにも共通する、
コンテクストマーケティングについてお話いただきました。
コミュニケーションプランニングの実際
高弘伯彦氏
今日は、コミュニケーションプランニングの視点から話をします。
★Find Something whereever you go.
コミュニケーションのプランニングでは何を考えなければいけないのか?
▼ボストンの例
ボストンといえばJFKの街。
※1875年6月2日にベルが、電話を偶然発明した場所に石碑がある。
iPhoneなどもここから歴史がスタートした。
↓
いっぽう、空港のなかでは公衆電話の跡が無惨にも放置されている・・・・
(現代の遺跡)
↓
空港のなかを歩くと、充電スタンドが整備されている。
※ユナイテッドエアラインが発行しているクレジットカード会社が設置して、
そこに広告をだしている。
広告の媒体は、媒体という名前を出した時点で、
たくさんの人が集まる、人がいる場所に広告を出す。
広告という名前を捨ててもいいが、
新たにコミュニケーションをとれる場所を作らないといけない。
公衆電話がなくなるというイノベーションが起きているので、
充電スタンドという新しいコミュニケーションが生まれた。
コミュニケーションの場所は、いろんな方法で解決されている。
コミュニケーションは多くは、そこに新しい文脈が生まれて来た場合に、
そこでどんな新しいコミュニケーションを作るかが、一つの手法になる。
▼Wホテルの例
ホテルの机にサービスのミネラルウォーターと一緒に、
「車のおもちゃ」が置いてあり、そこに、「going places?」と書いてあり、
アキュラ(米国版HONDA)の広告が書いてある。
→Wホテルとアキュラのタイアップ。
Wホテルとしておススメする車としている。
※Wホテルは、ビジネスの中にWの文字を入れるようにしている。
※Wホテルの客層は、アキュラの客層とマッチングするし、アキュラだからいい。
★ただ、パンフレットを置いておくだけでは手にとらないかもしれない。
・トイレットペーパーに「BACKUP PLAN」と書いてある。
※ホテルなどはある種のエクスペリエンスに基づいて、
コミュニケーションが設計されていることが多い。
▼実例
自分たちが旅行したり外に出たりすると、
コミュニケーションプランの手がかりがいっぱい落ちている、
それをどうやって作り出すか?
・ZWEI ツヴァイ
タグラインに「結婚相手紹介サービス唯一の上場企業です」とあるが、
誰に向けて書いているかわからない、
結婚相手を探す人が「唯一の上場企業」を見てサービスに申し込む理由がわからない、
あるサービスやデザインを使ってもらうには、
モチベーションを作って上げる要素が重要。
→タグラインを変更した。「結婚したくなるぐらい好きな人さがし」
結婚相談所の中で頭ひとつ抜け出したタグラインを考えた。
※結婚相談所の広告は大体出来上がっている
→ここから抜け出すデザインをしないといけない。
→よりシンプルなクリエイティブにした。
ターゲットが接触するであろう、
他の広告やメディアなどをその市場のコンテクストとして見て、
何が出来るか考えることが必要。
・ヘルシア
黒烏龍茶とヘルシアの違い
→黒烏龍茶は脂肪の吸収を阻害、へルシアは脂肪を消費しやすくする。
※両方併用しても問題ない。
ヘルシアを買う人は何かを期待して買っている、
ヘルシアを買うお客さんが、
ヘルシアというプロダクトだけでは答えられないことを、
作ってあげないといけない。
↓
歩数管理ができるサイト、体重管理ができるサイトなどを準備してあげる。
単なるプロダクトにプラスαすることによって、サービスに変換している。
▼今年一番残念だったボツ案
某茶色いお茶のシュリンクに、ペットボトルを飾れるアイテムをつけてみた。
ペットボトルのお茶を買うと、半日ぐらいは机のうえに置いているはず
→商品そのものを広告媒体にしてみた。
ボツになったのは、金額が高くなりすぎた。
▼ポイント
コミュニケーションをプランニングするというときに、
広告メッセージ以外にも、いろんなものが語りかけていると考えると、
町中にあるものすべてが、コミュニケーションプランニングの学びの場となる。
自分自身がいろんなところにいって、みんなが気づいたいない鍵を探して、
コミュニケーションのプランニングに活かすことが出来る。
★広告とコミュニケーションとの違い。
UXデザインとサービスデザイン
長谷川敦士氏
高弘さんとは逆のアプローチでの話
▼UX→SD
製造の時代
流通の時代
情報の時代
生活者に対してどんな経験を提供すればいいのかを設計する
=ユーザーエクスペリエンスデザイン(UXデザイン)
▼UIとUX
UI
・機能
・サービス自体
UX
・利用のきっかけや製品イメージ
・しばらく使ってみて・・・
▼HCDプロセス
UXを実現するためのプロセス
▼UXデザインの3階層
・サービスデザイン
→提供サービス自体/ビジネスモデル
・アクティビティデザイン
→サービス実現のための体験全体/シナリオ
・インタラクションデザイン
→タッチポイント/UI
★全体に言えることは「提供価値の実現」
▼提供価値
提供価値→Value Proposition→なにをなすべきか
▼実際にどうするか
・エスノグラフィによる生活価値の抽出
→価値マップ
▼サービスデザイン
・カスタマージャーニーマップ/エクスペリエンスマップ
→顧客との接点と使われ方などを可視化したもの。
・ステークホルダー
・フェーズ
・イベント/利用チャネル
・気持ち/テンション
・ユーザーゴール
※ジャーニーマップの書き方はいろいろ。
▼ビジネスモデルキャンバス
例:iPodのビジネスモデルキャンバス
▼アクティビティデザイン
・ペルソナ/シナリオ
・UXフロー
・サイトストラクチャ
▼インタラクションデザイン
・プロトタイピング
▼高広さんの話をうけて
広告は出せば見てもらえるという考え方が若干UX側にあるのではないか?
UXデザインの実際
安藤昌也
※コンサルタントとしての視点
▼UXデザインその前に・・・
▼ユーザー体験をデザインコンセプトにする有効性
▼実利用体験とユーザー心理
実際の利用体験では、出来た出来ない関係なしに、
モチベーションが製品評価に影響してくる。
モチベーションは「製品への興味」「操作への自信」の2つから構成される。
▼User Experience Supply Chainの構築
休憩
ビール飲んじゃいました。
パネルディスカッション
▼ユーザー/顧客に製品の提供するUXをいかに伝えるか
・高弘さんはツヴァイやヘルシアの、
そもそもの製品コンセプトをどうやって受けて、それをどう飛躍や否定をしたか。
→ツヴァイは否定したが、ヘルシアは否定していない、
製品を「こうでありたい」という姿のギャップが何かなのか考える。
・こうでありたいという姿?は企業側は適切に描けているのか、全うなのか。
→全うでないことの方が多い、
自分たちの提供しているサービスが何なのか、再認識してもらう。
・アプローチの仕方
そもそもツヴァイは何に困っていたか
→ブランド力とコンバージョンを上げたい。
どんなにブランドが頑張っても、イメージの良くないカテゴリはあるので、
戦略としてそのカテゴリを変える。
・ツヴァイだからの強みは?
→イオングループなので、イオン店内の中に入っていることが多い。
イオンのカラーをユーザーはよく見ているので、
それを上手く使うことができる。
・サービス自体を見直すことは?
→彼らはサービスの見直し自体はよくしている、
サービス自体の見直しにブランドイメージが追いついていない。
・こうありたい姿の具現化
→タグラインでドメインを明確にする、
タグラインの明確化が自分たちのビジネスの明確化にもなる。
※ドメインといっても3つぐらいある
(ビジネスドメイン・サービスドメイン・ブランドドメイン)
ツヴァイはサービスドメイン
・タグライン
→体験させたいエクスペリエンス、ターゲットへのメッセージ
・競合の調査/利用者の分析は?
→パブリックコンテクストを、環境として競合を見る。
・コンシューマーコンセプト
→消費者自身が日常的に持っている文脈
・ブランドコンセプト
→その会社自身が持っているブランドの文脈
・インダストリーコンセプト
→そのサービスや企業が所属しているブランドの持っている文脈
・パブリックコンセプト
→新聞や雑誌などで語られるコンセプト
★この枠組みはUXデザインでも取り入れられる。
・可処分時間
数分の空き時間を潰すものは携帯ではなくて別のものではないか?
→ 例:電車を待っている時間
携帯ではなくて、キオスクで売っている
ダウンサイジングしたお菓子がライバルかもしれない。
▼最近の出版社
読者に聞いて本を作ることが一般化している。
→ニーズではなくてバリューを考えないといけないといけないのに、
ユーザーの意見を直球で取り入れている。(ユーザーニーズ至上主義)
▼インダストリーコンテクスト
コンシューマーコンテクストとの違いは?
→業界常識みたいなものがある、それがバリアーになっている
業界常識だけでいくと、みんな話を聞かないので、
パブリックやコンシューマーコンテクストなどの、
いくつかの視点から見ることが大事。
質問タイム
▼自社での業界常識を打破するためには?
・リバースエンジニアリング
→プロダクトデザインでも利用できる。
正しい答えはでないかもしれないが、
自分なりの解釈を積み重ねていき、解析力を付ける。
その結果をどうやって説得するのか?
定量的な調査では人を説得できないことのほうが多い、
コンシューマー視点から説得する。
▼ツヴァイの件
タグラインで「結婚相談所で唯一の上場企業です」が刺さるユーザーもいるのでは?
結婚という人生の一代イベントで、安心する企業にお願いしたいユーザーもいるのでは?
→仮説なき定量調査は意味がない=ユーザーに聞けばなんでもわかるシンドローム。
変なバイアスがかかっているのでは?
雑感
内容は濃いものだったのですが、
後半の質問タイムで、質問者以外が放置された感があったので、
懇親会タイムは最後にして、
質問が足りない人はそこでディスカッションしてもらったほうが、
いいかもしれませんねー。
高弘さんの本を買ったので、
「4つのコンセプト」のフレームワークは、
機会があればワークショップの中に取り入れたいですね。
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