今年も開催されたHCD-Netのサービスデザイン方法論に参加してきました、
昨年に引き続きの参加となります。
初回は安藤先生のエスノグラフィです。
チームはAチームということで、
藤川さん、福原さん、田代さん、永井さん、久保田さんと僕の6人チームでした
講義
▼エスノグラフィの概要
▼自己紹介
15秒でその日驚いたこと、気づいたことを紹介。
▼エスノグラフィ
→民俗誌・民俗誌学
※簡単に言えば本
▼本来の民俗誌学とは
エスノグラフィとは、フィールドワークに基づいて人間社会の現象の
質的説明を表現する記述の一種。
・文化人類学、社会学の研究方法
外国や原始文化の人々の視点で、
彼らの文化を理解するための手法として1800年代に開発
・参与観察を行い、研究者自ら対象の社会を体験する点が特徴
・エスノグラフィとは元々、研究者が対象社会を記述したもののこと
※フィールドワークに基づいて人々の生活世界の体系的記述がなされたもの
方法論ではない。
※参与観察ということが大事
▼応用としてのエスノグラフィ
デザイン分野では応用として、フィールドワークにより
ユーザー体験を把握する方法に注目が集まっている。
・ビジネス分野で応用が進展
需要創造型値の製品開発の手法として
米国の成功事例を背景に、国内でも徐々に採用企業が増加。
・イノベーションの技法として
デザイン思考の技法の一つとしてとらえられ、
イノベーションにつながる方法の一つとして期待されている。
※不確実性の高いビジネス環境において
機会探索・仮説発見型のアプローチとして期待高
▼”イノベーション”イメージの変化
イノベーションはより身近なもの、より体験価値に共感するものへと変化している。
技術がリードし新しい行動や習慣・価値観が生まれる
↓
先進的な行動や習慣・価値観を技術によって広める
例:ジェルネイル
※イノベーションのヒントはプライベートな
人の行為や価値観の中にある
▼人間中心デザインプロセス ISO9241-210
エスノグラフィはHCDでは主に「調べる」と「確かめる」のフェーズとして適用。
▼エスノグラフィの全体像
エスノグラフィには決まったやり方はない。
HCDでのエスノグラフィでは多くのヒトとコラボレーションしながら、
モデリングを行い、ソリューションは提案に結びつける。
▼応用エスノグラフィの主な適用目的
応用エスノグラフィがよく適用される目的は2つある。
目的が違うと調査の観点が異なってくる点に注意。
主に新しいコンセプトの開発が目的
・生活の中でどんなニーズがあるのか。
・普段の生活でどんなことを行っているのか
どんな商品なら受け入れられそうか。
→主に行為を通した生活価値観に着目
主に改善や最適化が目的
・現場の作法や方法論に製品を適合させる
・作業方法などを最適化・効率化したものに改善する
→主に現場での行為に着目(行動観察)
▼コンセプト開発に期待されるエスノグラフィの役割
エスノグラフィをやるとなにが変わるのか
例:プレミアムモルツ
もともとは「モルツ スーパープレミアム」だった。
→金曜日はプレモルの日
→ご褒美感
→意味の転換=シーン
例:プレミアムロールケーキ
テスト時は「生クリーム仕立てのロールケーキ」で全然売れなかった。
例:ドトールコーヒー
エクセシオール・カフェ(フランスをイメージした高級店)
→スタバの進出にあわせて、エクセシオール・カフェに展開した。(意味の展開)
▼エスノグラフィによるユーザーインサイトの発見
コンセプト開発では、個別の差異よりも対象の人々に共通する
生活価値やニーズの分析・理解が目的となる。
多くのユーザーの”最大公約数”としての生活価値・ニーズの発見
▼従来型のマーケティング・リサーチとの違い
反応する代表制や量を測るのではなく、生活者全体に共通する普遍的な心理や行為、
環境の構造を取り出すことがエスノグラフィのアプローチである
マーケティングリサーチ
→垂直型顧客理解
エスノグラフィ調査
→水平型顧客理解
※漠然と広く行うと薄いデータになってしまう。
※アクセスログを分析してHCDをやっていますというヒトが増えた。
▼生活世界におけるニーズ
潜在的ニーズは、文化的理想と実践のギャップを探ると共に、
日常の実践に潜む本質的ニーズを発見すること
生活の中で意味を持たない
モノや行為は存在しえない
↓
生活や状況の中に意味が埋め込まれている
※だからエスノグラフィをやる!
▼エスノグラフィの実践で重要な理解とポイント
1.生活や状況の中に”埋め込まれた意味”を探る
例:ソフラン
・安藤先生のお母さんは柔軟剤全般を全部ソフランと呼ぶ。
・柔軟剤は2回目のすすぎのときに入れると教わっていた
・柔軟剤投入口というものがあったが知らなかった。
お母さんのメンタルモデルではソフランはふんわりコーティング材
だからすすぎの前にいれるようにしていた。
・社会構築主義
人々は思い込みの世界に生きている
Reality Remade
エスノグラフィでは
人々の生活の中に埋め込まれた
モノや行為の意味を解釈する。
2.対象者やデータの比較により価値観をより際立たせる
▼秘密のケンミンSHOW
エスノグラフィは、異なる群との比較により、
違いや共通項を際立たせていくアプローチ。
異なるデータを得ることでより理解を深められる。
▼対象者の選択
平均像のユーザだけでなく、エクストリームユーザを対象にするとヒントを得やすい。
※異なる群のユーザの比較により、製品の意味・価値を
深く理解することで、新価値の発見のヒントが得られる。
▼異なるタイプのエクストリームユーザー
調査の目的に応じて、どのようなタイプのエクストリームユーザを
調査すればよいか検討する。
タイプ | 例 |
エクストリームなニーズ | カーナビ開発のために、パイロットを対象に調査 |
エクストリームな使い方 | 歯磨き粉の開発のために、 歯磨き粉なしで磨いている人を対象に調査 |
エクストリームな環境 | BOPマーケットのために、不利な環境に住む人を対象に調査 |
▼実際調査での調査計画の例
自動車のインパネのUIデザインコンセプトを策定するために実施した
エスノグラフィ調査での構成例。
1回目:一般ドライバー調査
2回目:リードユーザー調査
3.行為の観察だけでなく
その背景や考え方も把握する。
例:安藤先生のお母さんが天橋立に行ったときの写真
安藤母の真ん中率高し
安藤父の端っこ率高し
なぜ?
→安藤先生のお母さんは写真撮影時にもたつくのがイヤなので、
中心にいって回りのヒトを呼び込む役目を行っていたので、
必然と中心となった。
集合写真を撮るという行為の中にも
意味や価値観が反映されていることがわかる。
※観察だけで上手くいかない場合はインタビューを行う。
▼「観察」と「インタビュー」の相補関係
観察とインタビューは相補の関係にある。
繰り返し行うことでより深い理解につながる。
外から観る
・観察法
・キャプション法
内から観る
・インタビュー
・フォトエッセイ
・脳内マップ
※見れば見るほと見えてくる ~to see more to see~
4. 現場を観る際は
”問い”を立てて観る
▼観察の心構え
多様なユーザの行動を観察するには、基礎知識の理解とそれなりの練習が必要。
5.調査で得られた情報は分析して”モデリング”する
▼ユーザーモデリングの3階層
属性層→行為層→価値層
▼ユーザ調査の各手法と分析との関係
イオンの中をフラフラし、
テーマを「イオンで食事を取っているひと」として、
「フードコート」と「レストラン」に分かれて観察を行いました。
「問いをもって」フィールドワークを行うというところが難しかったです。
14時まえに楽天本社に帰社し、
KAカードの作成とKA法を実施しました。
KA法
KA法は、調査結果それぞれの事実の背後にある”ユーザーにとっての価値”を抽出。
例:かっこいい価値はNG
かっこいいものを見せびらかす価値ならOK
・心の声を価値にする。心の声を大事にして”価値”を書く。
・出来事に複数の要素が入るときは自分達のテーマに沿ったものを書く
・多少長くても大丈夫、KJ法を行うときにある程度抽象化される。
(抽象度を高くしすぎない)
・未充足を観察することは難しい。
・分からないことがわかることもエスノグラフィ
分からなければ再調査すればいい。
・どうやって”問い”をコントロールするか。
■価値マップ作成
まとめ
エスノグラフィは、ユーザの生活に埋め込まれた意味を見出し、
解釈するための作業
「観察」と「インタビュー」を組み合わせた調査と分析を繰り返すことで、
ユーザの生活世界がどんどん観えてくる
エスノグラフィは調査するのが難しいが、KA法は上手く処理できる。
一番ダメなのは調査しっぱなしが一番だめ
大事なことは、この作業を通してユーザの生活価値に共感すること。
そしてそこからデザインを生み出すこと。
懇親会
懇親会は青物横丁の「てけてけ」にて。
3500円飲み放題の割には料理がたくさんでてきてお得でした。
■HCD-Net サービスデザイン教育セミナー
第1回 05月10日(土)エスノグラフィ?
第2回 06月07日(土)カスタマージャーニーマップ
第3回 07月12日(土)発想法
第4回 09月13日(土)ユーザーインタビューと要求抽出
第5回 10月11日(土)構造化シナリオ法
第6回 11月15日(土)ペーパープロトタイピング
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