第77回HCD-Netサロン「意味のイノベーションとHCD」 2018年04月03日

■2018年04月03日
場所:恵比寿 amu

第77回HCD-Netサロン「意味のイノベーションとHCD」

■話題提供:意味のイノベーションとはなにか/コンセント 長谷川敦士氏

ロベルト・ベルガンティ 突破するデザインより。

▼同書のポイント
 1.現在のイノベーションの主流の方法では、アイデアに埋もれてしまう。
  どれだけたくさんのアイデアを持ったところで、ビジネスと顧客にとって
  取るに足らない価値を増やすだけである。多くのアイデアを区別できなくなり、
  モノゴトが曖昧になることで、価値を破壊してしまうことになる。

 2.モノゴトの価値は、どの方向性がより意味を持つかというビジョンから生まれる。
  多くのアイデアは必要とせず、意味のあるビジョンが1つあればいい。
  モノゴトをいかに改善するかではなく、なぜ私たちがそれらを必要としている
  かが重要だ。勝者は既存の問題を過去のものにし、シナリオを再定義する。
  そして、よりよい何かではなく、「より意味のある何か」を提供することで
  顧客をほれさせるのである。

  →どういった方向性でビジョンを提示するには。

 3.意味のあるモノゴトをつくりだすには、近年のイノベーションの議論において
  人気の、外部から多くのアイデアを得る方法論とは全く反対の原理のプロセスを
  必要とする。それには「批判精神」と「自分自身から始めること」が必要だ。

  →アウトサイドインとサイドインアウトにて批判すること
  
  例:nest (自動制御サーモスタット)
    →人の意見を聞く話ではなくて、nestの人がサービス化した。
    →意味のイノベーション

▼デザイン思考と意味のイノベーション
 人々→意味→ソリューション

▼意味のイノベーションのプロセス
 私→ペア→ラディカルサークル→解約者→人々

▼なぜ「意味のイノベーションか」
 ・クリエイティブな問題だけでは、独自色を出す力を失っている
 ・オープンイノベーションやデザイン思考は、現代の「総合品質管理」となり、
  企業が取り組むべき当然のこととなった。それでは他社との差別化には繋がらず、競争優位性を作り出せない。

▼なぜ「意味のイノベーションか」
 ・意味のイノベーションは、組織が取り組むべきイノベーションの「次の一手」である。
 ・以前は優位性を生み出してた改善型のHCDは、あたりまえ品質になってしまい、市場で飽和してしまったので、事業における差別化のためには「意味のイノベーション」が必要であるということ。

▼デザインファームの変遷とデザイン思考
 ・IDEOやJIBAはビジネス自体を作ることに変わっていった。

▼デザイン思考の2つの分類 
DTn→Design Thinking driven by needs
 DTf→Design Thinking driven by frameworks

▼漫画でも・・・
 まんがでわかるデザイン思考
 →イノベーションの起こし方と言っている。

▼論点
 1.そもそもデザイン思考(HCD)に「意味のイノベーション」は欠けていたのか?
  当初から組み込まれていたものか?
  HCD-NetではDTn(Design Thinking driven by needs)ばかり論じられてきた?

 2.「自分ごと化」「主体性の問題」
   内省、批評の重要性
   デザイナという職業の限界
   ファウンダー、デザイナー、オペレーター

 3.「ビジョン策定」という主体性
   あるいはビジョンを他に求める姿勢
   しかしそもそもビジョンは必要なのか?

■話題提供:利他的UXとイノベーション/千葉工業大学 安藤昌也氏

▼最高のヒットをつくる大原則
 ・HOW(手段)でなく

 振り子のようなもので、どんな分野でも振り返りがある。

 →ポスト人間中心設計という言葉は人間中心設計を矮小化して考えている。

▼UXデザインが着目する「体験価値」
 ・利用体験→累積的UX→経験的知識→体験価値
 ・ニーズ→本質的ニーズ→体験価値
 
  →ニーズというものは人の体験の中に埋もれていて見つけにくい。

▼体験価値の形成プロセス
 
▼UXデザインとユーザーモデリング
 属性層→行為層→価値層
 (UXデザインの教科書 P132)

 エクストリームユーザーを調査していくんじゃなくて
 エクストリームな自分のアイデアを出していく。

▼アイディアの選択に作用する文脈イメージ
 体験フィルター(共感)→(体験フィルター)

 →一発目のアイデアなんてクソみたいなもの。
  それを修正するのにUXコンセプトツリーという方法がある。

▼アイデアが選ばれた理由から作るUXデザイン
 (UXデザインの教科書 P.149)

▼「突破するデザイン」より
  「父親は子供たちが望むものをただ与えるのではなく、
   より意味のあるものを与えようとする、
   父親はビジョンを追求しているのです。

  →子供はニーズを言えるのか?

  例:WEAR
    子供のファッションのページがすごい
    →それに突っ込む人もいる。

▼意味
 ”意味”は自分の中にあるようで自分の中にはない
 ”人生”も本当は自分で生きていない。

 例:所ジョージ「自分は自分でできていない」

  →歌になっていない。
  →自分の人生は相手でできている。

▼安藤研のエスノメソドロジーの実験
 →相手との関係性

▼利他的UX
 →Coaido119
  (津田沼で実験を行なっている)

▼利他的
 →人間は基本的に利他的。
  自分ごとばかりに目を向けると関係性が失われてしまう。

 →ユーザーに聞かなくていいんだということもありといえばあり。

 関わりをそのまま観る
 関わりの中に意味がある。

■トークセッション:意味のイノベーションとHCD
参加者:田仲薫氏(IDEO Tokyo)、山崎和彦氏(千葉工業大学)、安藤昌也氏(千葉工業大学)、モデレーター 長谷川敦士氏

・所ジョージに触れなくてもいいんじゃないかw
・本を読んだらIDEO批判がすごくしてあった。
・HCDでもUXでも”意味”は大事になる。
・本の中で言われていること以外にも行なってるデザインがIDEOにはある。
・ただ単に出社するだけでは辛い。意味を追求する。

・IDEO的デザイン思考を敵におくことで儲けようとしている感がある。
・クライアントサイドの方が人ごとのことがある。

・翻訳者の安西さんの手紙から。
 ・デザイン思考も色々あるよね。
 ・Design Approach Based on culture & Social
・エストニア国立博物館(長く占領されていたので文化がない)

・デザインするときに文化が必要なのはあたりまえ。
・習志野市は文化の街と名乗っている(埋立地だから文化がない)

・IDEOにはデザイン思考でやってくださいという依頼はあまりない。
 それより企業の解決できない課題を相談される。
・HCDのユーザーの見方。企業の1社員もユーザー。

・デザイン思考神話が流れている。
・アウトサイドインとインサイドアウトの切り替えができる人材がいる。

・日本の組織において個のアイデアを入れていくことを支える経営者が増えたらいい。そのためにこの本が日本で流行るといい。
・ラディカルサークルがうまく回るといい。(批判)

・批判する文化は日本にはない。ダメ出しが多い。

・人のために作りたいと思っているので、デザインリサーチする。
 自分が影響されるためにはエクストリームユーザーを見ればいいのでは。
 内省モードの時と外省モードの使い分け。

・どこから主観がダメになったのかがわからない。
 (著者の思い込みかも)

・クラシックデザイナーは自分が出るので、チームでやろうよ。

・ベルガンティの話は問題解決型デザインをたくさんして混乱した経緯がある中で、この本の内容がどう伝わるのかが問題になってくる。
・意味を作っていくとは難しい。意味には文化が必要。
・IDEOでの文化の取り入れ方は?
 →文化は広い分野なので、文脈性の話に近い。(エリア・人)
 →問いを常に変えている。そのためのプロトタイプやリサーチ。

・問いの発想を行うことが大事。
・今のHCDやUXはメソッドを選択してやっているだけで発想をしていない。
・メソッドを覚えればいいものができるという誤認識。
 →長谷川さんはAIITの実習でプロジェクトプランニングを行なっている。
・プロジェクトでリサーチの結果を因果ループ図で作ろうとしている。スタティックに捉えない。

・健康になりたいけど、いっぱい食べたい。

▼質疑応答
・デザインの評価をこれからどうやっていったらいいのか。
 →自分のビジョンで評価すればいいのではないか。
 →利他研究をやるときには気をつけなければいけないことがある、
  承認要求とかは測りやすいだけで生まれたかもしれない。
 →商売になるのかと折り合いをどうつけるか。
  関係性なのだけど価値のギャップがどこにあるか、
  価値観のギャップがあれば資本で解決することになる。
  意味のあることならば結果はついてくるはず。
  →主観と測定可能なものと折り合いがつかない。
   が測り方も研究していかないといけない。
 →ブロックチェーン周りのことであればデザイナーはやることが山ほどある。

・利他的UXの中で人は利他的であるとした場合、デザインは必要ではないのでは。
 →メールのCCに人を何人入れれば返答してくれるようになるか。
  結果、半比例になった。
 →デザインの人助けをする研究をしている。
  ぎっちりしっかりしたデザインの方が反応が悪かった。
  デザインをYahoo見たくしっかりとしすぎた。
  「オンラインビヘイビア」
  助けるという情報をどのタイミングで出せばいいか研究をしている。


ポスターセッションもあったのですが、話に夢中でほとんど見れませんでした。

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