DSST 2011年02月19日 No.05

LV.4 Senior Design Engineer 向け デザイン専門能力高度化プログラム- No.05
デザイン戦略特論 ケーススタディ:サムスンの経営とデザイン

2011年2月19日(土) 15:10~16:10
泉ガーデンタワー(六本木一丁目駅直上)7階コンファレンスセンター ルーム2

■概要:
 サムスンは1993年以降、経営トップの支援により企業戦略をデザイン重視へ転換、現在の成功に繋がる。
 サムスンデザインの現状とマネジメントのあり方等について解説する。

■習得できる知識・能力:
 アジアデザインの動向を知るケーススタディとして、著しい躍進を遂げた韓国サムスン電子を取り上げることで、デザイン戦略やデザインマネジメントのあり方について学ぶ。

■講師 吉田 道生氏
 1958年神奈川県生まれ。
 82年日本大学芸術学部卒業後、カメラ、事務機器製造メーカーにてデザイン開発に従事。
 90年代半ばよりデザインとビジネスの関係に興味を持ち研究を始める。
 2000年より日本サムスンデザインチームにてチーム長としてデザインの研究開発を推進している。
 2007年秋の一橋ビジネスレビュー「デザインと競争力」の特集号に「サムスン電子のデザイン戦略」を寄稿。

■韓国産業のパラダイムシフト
 ・80~90年 OEM生産・薄利多売がメインだった。
 ・90年後半のアジア経済危機と、円高の影響で韓国は打撃をうけ、多くの企業が倒産した。
そのため、企業は自社の製品・戦略の見直しを必要にせまられてた。
               ↓
          次の時代への準備ができた。
 
■Samsung Designのあゆみ
 ・91年~ 初の海外デザイン研究所設立(東京)
 ・93年 サムスン「新経営」宣言
     ・ドイツに経営陣が集められて、会長の意向が伝えられた。
     ・奥さんと子供以外のすべてを変えろ!!
     ・6時に出社。16時以降はこれからの仕事の準備と家族のために使え。
 ・94年 デザインセンター ソウル移転
 ・96年 「デザイン革命の年」宣言
 ・97年 サムスンデザインアワード制度

※準備がちゃんとできたタイミングでショックが起こせた!

■Design Vison & Strategy

・デザインのプロセス
  1.問題の明確化
  2.実態調査
  3.解決方法の考察・協議
  4.アイデアの整理(戦略)
  5.具体的提案の政策
  6.プレゼンテーション
  7.解決案の実施

 ※プレセス自体に価値があるのではないか。

 ・製品デザインの進化
  ・形態
   ↓
  ・使いやすい製品
   ↓  
  ・新しい価値・経験
   ↓
  ・企業の哲学

 ・SamsungのBrand Value創出
   組織力(競争力確信、規模→効率)
   プロセス(市場先行確信、対応→創出
   製品(価値確信、技術→感性)

■組織力
 ・世界各地のデザインセンター
 ・各主要都市に専門的な研究を集約した。
   ヨーロッパ→デザイン(造形要素)
   アメリカ→操作性(ユーザビリティ)
   アジア → 素材・仕上げ
 
 ・長期人材育成プログラム
   入社してから10年目ぐらいまでのプログラム
    代表的なもの
     ※サムスンデザインメンバーシップ
     ※デザインパワープログラム

■サムスンデザインメンバーシップ
 http://www.samsung.com/jp/aboutsamsung/electronics/design/membership/2010_membership.html

  ・1993年に次世代を担うデザイナー育成のために設立
  ・実践的な教育プログラムにより高度なデザイン開発能力を研磨
  ・学生の自治会による自主的なプログラム
  ・サムスンの現役のデザイナーもチューターになる。
   ※チューターの人気がすごい(100倍の競争率)

    ・ここに集まってくる学生のレベルが高い。(次世代のデザイナー)
    ・次世代のデザイナーのマネジメントするということが、
     チューター自身のレベルアップや役職にも影響があるため。

  ・サムスンにとってはやむにやまれず設立された。
  ・設立後は韓国のデザイン業界にもいい影響があったため、
   大学側の印象もよくなり、人気が高まった。
  ・現在まで、訳半数が入社した。
  ・20大学、500人。

■デザインパワープログラム
  ・海外有力デザイン事務所、大学等への派遣(自分で交渉)
  ・半年から1年、業務を離れ、デザインを探求
  ・入社後8年~10年の中堅デザイナーが対象
  ・2003年~2007年で50名のデザイナーが履修
  ・2008年~2009年は中断。
  ・2010年プログラム再開

■製品価値

事例① 2001年のLCDモニターのアーム変更

  ・製品のヒンジを改良
    →ユーザビリティが向上
    →輸送時のスペースも縮小

 事例② テレビの事例
  ・Bordeaux
  ・感性思考によりリニューアル
    →マニア層から主婦層へターゲットが変わった。
    →ここまで大きく変化するには経営層の決断が必要。
    →ピアノブラックという素材を使って、300万台を製造するのは無理だった。
      (デザイン、機能、予算)
    
  ※感性価値創造型のデザイン提案に早い段階で取り組んできた。
  ※Bordauxをやり遂げたことで、デザイナーと経営者の信頼関係ができた。

■プロセス
 ・社内専門家チームによる使用性革新活動
  GUI / PUI / AUI
・Userの関心の変化を体系的にリサーチ
・体系的なリサーチを基に製品開発及びビジネスモデル創出

 ※体系的に市場動向を把握し、新市場を開拓
  デザインセンターで専門家の育成

 ※デザインを決めるのは誰か?
  →デザインと決めるのはデザイナーという考え方は、
   ある意味、経営陣が責任を放置しているともいえる。

  →日本のメーカーはデザインの価値を経営陣が理解、守ることに対して、
   欠けている(サムスンと日本を見ている青木さんの意見)

■参考資料

 ・日本サムスン広報誌「サムスンからの手紙」特集
 http://www.samsung.com/jp/park/letter/25.html
  ~若手デザイナーの卵を育てデザインを文化に根付かせる。

 ・一橋ビジネスレビュー
 http://www.toyokeizai.net/shop/magazine/hitotsubashi/backnumber_list/・y=2007
  特集論文 サムスン電子のデザイン戦略

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