■Part1.サービスデザインとは。
▼デザインとは。
現状を好ましい状態へ変えるために、行動指針を考える人はみな、
デザインをしているのです。
Herbert A. Simon / The Sciences of the Artificial (1996)
・近年はユーザー体験を重視するようになった。
・人間中心デザインサイクル
・デザイン思考
→ユーザー調査なんてしなくてもデザイナーはわかってるよ。
どうして観察は必要なのか。
→我々がバイアス(偏見)をもっているから
▼インクルーシブサービスデザインの可能性
Airbnbの見た目での人種差別をサービスデザインで改善した。
▼ダブルダイヤモンド
課題発見→課題解決
情報の発散と収束。さらにアイデアを出す発散、
そして最終案に収束する。
▼社会とデザイン
1900- 製造の時代
1960- 流通の時代
1990- 情報の時代
2010- 顧客の時代
▼デザインが求められる社会背景
VUCAの時代
・Volatility(変動性・不安定さ)
・Uncertainty(不確実性・不確定さ)
・Complexity(複雑性)
・Ambiguity(曖昧性・不明確さ)
▼VUCAの時代:厄介な問題の時代
・単純な問題:自転車のパンクの修理方法
・複雑な問題:世界で一番速い自転車の製造法
・厄介な問題:自転車と車・歩行者の共存
▼社会が直面している問題への対処法
・とりあえずやってみる→仮説・実行
※アブダクション(仮説形成)と呼ばれる
▼ソーシャルイノベーションとデザイン
・イノベーションとは。
経済活動の中で生産手段や資源、労働力などを
それまでとは異なる仕方で新結合すること
ヨーゼフ・シュンペーター, 1911
→日本語の罠
・日本では1985年の経済白書にて「技術革新」とされた
これによって、日本では「イノベーションは技術的なもの」
という認識が広まった。
・イノベーションとは?
イノベーションとは、人々の行動・習慣・価値観を変化させる
新しいアイデアを生み出し、普及させ、新しい未来をつくること。
小川悠/i.club主宰/武蔵野美術大学ソーシャルクリエイティブ研究所 客員研究員
・ソーシャルイノベーション
社会の差し迫った問題の解決には、既存の構造や政策では
不可能であることがわかったから。
・ソーシャルイノベーションの時代
これからの社会は、人々が広義のデザインアプローチを
活用しながら社会のなかでプロジェクトの実践を行っていく
「ソーシャルイノベーションの時代」となっていく
1. 問題解決と意味形成
2. 慣習モードとデザインモード
3. エキスパートのデザインと非エキスパートのデザイン
・問題解決と意味形成
例:うなぎの寝床(地域文化商社)
「MONPE」という意味形成
・デザインモードの展開/非エキスパートのデザイン
・From designing to co-designing
1984:FOR PEOPLE
1984-2014:消費者・顧客→ユーザー
インターフェイスデザイン:ユーザビリティ
デザインリサーチャー
2014:WITH PIOPLE:人と一緒にデザインする
2044:BY PEOPLE:誰もがデザインする:未来を形にする
▼サービスの例
サブスクリプション型
交換価値→利用価値
Goods-Dominant Logicから
Service-Dominant Logicへ。
▼サービスデザインとは。
「サービスデザインは、組織がそのサービスを顧客の視点からとらえるのに役立つ。
それはシームレスで質の高いサービスエクスペリエンスの創出を目指して、
顧客ニーズと企業ニーズのバランスがうまくとれたサービスをデザインするための
アプローチだ。その根幹にあるのはデザイン思考であり、クリエイティブで
人間中心のプロセスを通じてサービスを向上させ、新たなサービスのデザインに取り組む。
顧客とサービスを提供する側の双方を関与させるコラボレーティブな手法によって、
サービスデザインは組織が自らのサービス全体を正しく認識し、
ホリスティック(全体的)で有意義な改善を可能にするのに一役買う」
(多くの支持を得ている)メーガン・エリン・ミラーによるまとめ
▼サービスデザインの6原則
・人間中心
・共働
・反復型
・インタラクションの連続性
・リアル
・全体的な視点
▼コンセントのサービスデザイン
「優れた体験」を「継続的に提供するしくみ」を作ること
▼サービスデザインの3レイヤー
1.サービス・事業戦略の策定
2.ユーザー体験のプランニング
3.タッチポイントのデザイン
▼サービスデザインの5つの側面
・「マインドセット」としてのサービスデザイン
・「プロセス」としてのサービスデザイン
・「ツールセット」としてのサービスデザイン
・「組織を横断する共通言語」としてのサービスデザイン
・「マネジメントアプローチ」としてのサービスデザイン
■Part2.サービスデザインへの取り組み方
▼サービスデザインのツール
・ペルソナ
・カスタマージャーニーマップ
・システムマップ
▼利用者視点のサービスの実現
・生活者にとっての価値
提供価値:Value Proposition
・生活者の行動文脈
カスタマージャーニー:Outside-In
▼1.生活者にとっての価値
・「ニーズは」、実環境制約下での具体的な欲求
・ニーズの前提としてそもそも解決したいことがある(という幻想)
・通常、我々は自分の価値観を自覚していない。
→エスノグラフィ調査
▼エクストリームユーザーの価値観
「未来の普通」のヒント
例:GoPro 作成者自身が海で自撮りできるように考えた。
▼サービスデザインの構造
提供者
↓
サービス提案=体験のコンセプト
↑
市民・生活者
▼2.生活者の行動文脈
カスタマージャーニーマップ
(正しいフォーマットはない)
inside Out型:企業・組織視点
Outside In:顧客視点
・サービスブループリント
(歴史的にはこちらの方が古い)
・5つのワークモデル
Karen HoltzblattとHuge Beyerによってまとめられた、
ユーザー調査・分析の手法「Contextual Design」のユーザー
分析モデル。
・フローモデル
・シーケンスモデル
・人工物モデル
・文化モデル
・物理モデル
▼Inside Out:事業視点
・サービス/制度がどのように使われているか
・課題や改善機会を示唆する
・効果測定のための指標(KPI)設計に役立てられる
▼Outside In:ユーザー体験視点
・生活者がどのようにサービス/制度を体験するか
・自分達が提供するサービス以外も含めた体験全体を可視化することで、
気づきを得る
・よりリアルな生活者の文脈や感情を把握できる
ポイント:Outside-in視点で考えるのが、ユーザー視点
・ユーザー視点の種類
顧客行動理解→TO-BE
▼ペルソナ
なんのためのペルソナか?
・ターゲットユーザーとペルソナは違う
ペルソナの真の役割は「ゴムのユーザー」を避けること。
・プロトペルソナ(捏造ペルソナ)でもないよりはまし。
▼システムマップ
・木を見て森も見る
▼サーキュラーデザイン
これからのサービスデザインの生態系
資源→素材→製品→使用→回収→再資源化
▼サービスデザインのマインドセット
・未知のものを取り込み続ける
・不確定な状態を許容する
・オープンに対話する
・デザインアプローチを信じる
(失敗もプロセスのうち)
■視点1:アブダクションとサービスデザイン
アブダクション
・演繹:一般論や過去の事例(前提)から結果を推測する
人はすべていつか死ぬ+ソクラテスは人間である→ソクラテスはいつか死ぬ
・帰納:複数の事象(前提と結果)からその法則や規則を推論する
ソクラテスは死んだ+アリストテレスも死んだ→人間は死ぬ
・アブダクション:新しい仮説を導きだす
内陸の地域で魚の化石が見つかった→その地域はかつて海だったかもしれない
アブダクションとデザイン思考
・推論
・演繹
・帰納
・アブダクション
▼アブダクションのなにがうれしいか
・「作ってみること」は、意思の後ではなく、先にあるべき:
プロトタイピングは思考である
・「行き詰まったら作ってみる(まずはなんでもいい)」
「とりあえず描いてみる」
・発想を促すための日常:
強制的に仮説を見いだすことは、日頃の観察による
・アブダクションによって見いだされるものは「ビジョン」
▼アブダクションの体験
・美大出身者は体験している
(が、言語化されておらず、自覚していないケースも多い)
・社会人もデザインスクール等に行くことの意義の一つ
・ビジネスパーソンが「プロトタイプすること」を信じられない:
アブダクションの体験を経ると腑に落ちる
▼ダブルダイヤモンドの真実
きれいなダイヤモンドにはならない。
▼サービスデザインとアブダクション
プロジェクトリード視点
メンバー視点
■視点2:バウンダリーオブジェクトとしてのサービスデザイン
※ATフィールドのようなもの
・「異なった人々をつなぎ」「共通の理解を生み出す手段」
・Star & Griesemer(1989): 博物館の運営において専門家とアマチュアが、
互いに不十分な理解のなかでどうして協働できていることを説明するため
に導入、アクターネットワーク理論の影響を受けている。
・特徴として、さまざまな解釈を許す「柔軟性」を持ちながら複数の解釈の
「一貫性」を生み出すということが指摘されている
・Rhinow et al.(2012)はデザインプロトタイプがイノベーションプロセスに
おけるBOとして機能することを指摘
・Stickdorn et al.はCJM・ペルソナがBOとして機能することを指摘
▼サービスデザイン
「優れた体験」を「継続的に提供する」しくみを作ること。
→「継続的」であるためには、意思を持ったプロジェクトチームが
関わり続けることが重要
▼ソーシャルイノベーションの時代
→「持続的なプロジェクトを生み出すアプローチ」としての
サービスデザインが人々に広まっていくことの重要性
▼バウンダリーオブジェクトとしてのサービスデザイン
・サービスデザインプロジェクト:
異なったカルチャーを持つ人々が、共通の目的に沿って、
「サービスデザイン」という言語によって会話し、
「サービスを生み出す」というゴールに向かって走る活動
具体的な活動計画仮説(要件)
・SD活動をテンプレートを使わずスクラッチで考えて実施する=車輪の再発明上等主義
・SDプロジェクト内で役割分担を固定化せず、全員ですべてのタスクを担当する
▼サービスデザインの導入のセオリー
グッドプラクティス
・小さなプロジェクトから実践する
・「非公式」のチームを組成する
・プロセスではなく、成果を示す
・「トロイの木馬」を見つける
アンチパターン
・いきなり壮大なテーマを掲げる
・組織や職種などの「ハコ」だけつくる
・ツールやプロセスを押しつけてしまう
・サービスデザインの文化を押し出す
▼参考:DX推進とデザイン(IPA 情報処理推進機構 DX白書2021)
・「デザイン思考」は製品やサービスのユーザーが抱える真の問題と最適な解決
方法を探索し創出する思考方法であり、DX推進において顧客に新しい価値提供
をするために有効な手法である。
・「デザイン思考」は仮説検証型のプロセスであるため、短期間でソリューションを開発し、
顧客からのフィードバックを受けながら修正を繰り返す必要がある。
そのため、小さなチームで開発・適用を短期間で繰り返しながら開発する
「アジャイル開発」手法や、開発チームと運用チームが技術的のみならず
組織的文化的にも連携することでスピードと品質の向上を目指す「DevOps」との
相性がよい。これらの手法をあわせて導入することによってより大きな効果をえることができる。
▼まとめ
サービスデザイン:体験としくみのデザイン
・バイアスを壊すためのユーザー調査
・VUCAに対してのアブダクションアプローチ
・ソーシャルイノベーションにおける意味形成
・サービスドミナントロジック時代の事業開発
サービスデザインへの取り組み
・ツールではなく、マインドセット(態度)
・チーム作りのためのサービスデザイン
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