LV.4 Senior Design Engineer 向け デザイン専門能力高度化プログラム- No.03
知財戦略特論
■概要
デザイナーにとって知的財産は、自ら創造した成果物を保護するだけでなく、製品等の価値の向上に寄与する重要な基礎知識である。
本講義では、知的財産権の概要について、デザイナーにとって最も関連する意匠権を中心に解説する。
また、デザイン経営における知財の戦略的活用の考え方についても理解を深
■習得できる知識・能力:
デザインを保護する意匠法と著作権法、不正競争防止法の違い、意匠権取得の効果、意匠権と特許権を括表した戦略的活用方法
■講師
川崎芳孝氏
特許庁審査業務部 意匠課長
1979年 千葉大学工学部工業意匠学科卒業
1979年 特許庁入庁
1991年 通商産業省貿易局検査デザイン行政室デザイン奨励班長
2000年 意匠審査基準室長
2006年 産業機器上席審査長
2008年 意匠課長
■日本の特許の歴史
・明治時代にウィーン万博へ出品した。
・昭和30年ごろから、日本国内での模倣が多発した。
・日本企業間での模倣を止めさせよう
昭和34年に特許庁意匠科を設立。
↓
もっと企業に自分の製品のほこりをもってもらおう。
↓
Gマーク制度、グッドデザイン賞などの賞をつくった。(現在は経済産業省が管掌)
■意匠法を取り巻く主な法律等
・特許法
・実用新案法
・商標法
・不正競争防止法
・著作権法
※意匠法は複数の法律と関係していて、複雑・・・
※著作権と意匠権は似ているようで違う。
※意匠権は出願が必要、目的は工業製品の保護が主眼。
※対象生産品の模倣品を排除する場合は、著作権だとむずかしい。
※著作権は子供の書いた絵でも書いたらすぐに発生する。
↓著作権のほうがメリットだらけのような気が・・・
■実例
・新居猛氏デザインの椅子 VS 輸入販売された大量生産の椅子
※新居さんのデザインした椅子はたしかにすぐれたデザインだが、意匠法と出願をしていなかったため、
著作権で裁判を起こしたが、
著作権(芸術作品)として認められなかった。
椅子(人が座るもの)の目的を考えた場合、大量生産を念頭に作られているため、
著作権では保護できなかった。
・ファービー
意匠法の出願をしていたが、これも、デザインとしての著作を認められず(ファービーには審美性がない)
大量生産品として、著作権がないとされた。
・博多人形と仏壇
これも意匠としては認められなかったが、訴えられた企業が商品の型を取って量産(デッドコピー)するなどしていたため、
悪質として著作権が認められた。
■意匠法と不正競争防止法
・不正競争防止法は出願等がいらないので、裁判は起こやすくお金もかからないが、
立証責任が原告側にあるので、裁判がむずかしい
・デッドコピー(完全な模倣)かどうかがポイント
・コピーする企業もデッドコピーではなく、微妙に変えたりするので、同一性の立証が難しい。
■意匠出願
・中国の出願が以上に多い。42万件
自国の経済を発展させるため、出願することが重要だと気づいた(日本の昭和30年といっしょ)
中国は出願料を下げている。
・韓国は法律のデザインがスピーディ。
CADデータでの意匠出願もOKに。
■日米欧中韓
中国は日本へ出願していない
■1.他社による模倣品・類似品対策
・過失の推定
→知らなかったではすまされない。
意匠権は先頭主義なので、類似品を調べておくことは商品開発者の責任。
・差止め
税関では、差止めができる(そのまま送り返すか、廃棄するか)
・損害賠償請求(部分意匠)
化粧用パフ
→全体としては似てないが、突起物の部分だけを見て、侵害とみなした。
→部分意匠はその部品しか見ない。
※寄与率
→けっこう乱暴。どの程度意匠に影響があるかの数値。
・部分意匠による出願戦略
→部分意匠にすることにより、自社製品の保護をしやすくした。
■部分意匠による出願戦略4
・空間の部分にデザインのポイントがあったため、
空間を保護するため、その端を意匠出願した。
■部分意匠の効果
・物品がちがうと、部分意匠が及ばない。
■部分意匠の出願方法
・表示画面も部分意匠として出願できる。
■パッケージデザインの模倣事例
・パッケージデザインを模倣すると、中身が多少変わっても同じ製品と認識されるため、
コピーする方はやりやすい。
■立体商標
・自他商品識別機能
→製品の形(パッケージなどがない状態)だけで、自社の製品と認知してもらう。
(ただしCMなどで多大な費用がかかる)
→形をかえないこと。宣伝をすることにより認知させる。(マグライト・コカコーラ)
→コカコーラの瓶は、意匠登録してないが、不正競争防止法で模倣品を排除した。
・ヤクルト
■技術保護との相乗効果
・フォークリフト用タイヤ
→意匠と特許を両方出願
→台湾からの模倣品を意匠でブロック。
→意匠を許可し、模倣品メーカーにアウトソーシングの許可を出した。
コメント