Tama Design High School 「総合知を支える美術大学のデザイン教育」 2023年12月20日

■自己紹介
大橋由三子さん
多摩美術大学プロダクトデザイン専攻 教授
パスキーデザイン代表

▼animal rubberband シリーズ
・発売から20年
・2003年にグッドデザイン賞 中小企業庁長官特別賞 
・animal rubberbandは、かわいい輪ゴムを作ろうとしたのではなく、
デザインについての違和感を、コンペティションで試してみたもの。

animal rubberband

シンプル、ミニマム、削ぎ落して抽象化することが良いデザインに
なるのだろうか?価値観を問い直してみた。

▼挑戦
工業製品としてとても優秀な輪ゴム。円形状の強さ
引き算できないかたち。
かたちを加え、従来の輪ゴムになかった価値を与えることはできるか。

▼観察・思考
輪ゴムの製造過程。原料から店頭まで。
既存のデザインの分析。
暮らしの中の輪ゴムとはどんなものか。
普段の自分たち、人との関係はどのようなものか。どう扱っているか。
もしも変えることができたら、より良くなるところがあるか。

落ちていたら、拾ってもらえる輪ゴムを作ろう。

■総合知を支える美術大学のデザイン教育

▼総合知とは何か 内閣府 総合知ポータルサイトより引用
「総合知の基本的な考え方及び戦略的に推進する方策」

「総合知の基本的な考え方」
「多様な「知」が集い、新たな価値を創出する「知の活力」を生むこと
・多様な「知」が集うとは、安全・安⼼の確保とWell-beingの最大化に向けた未来像を描くだけでなく、科学技術イノベーション成果の社会実装に向けた具体的な手段も見出し、社会の変革をもたらすこと。
これらによって「知の活力」を生むことこそが「総合知」であり、「総合知」を推し進めることが、科学技術・イノベーションの力を⾼める」

▼デザインの役割
さまざまな学術分野と人の暮らし
・自然科学
・人文科学
・社会科学

人の暮らしに分野の境目はない

さまざまな学術分野と人の暮らしの間には必ずデザインがある。
社会実装するためにはこの間を行き来しながら開発する必要がある。

▼抽象的思考「数」
子どもにとって、数の合成の理解は難しい

▼視野を広げるとはどういうことか。
1つの要素を取り出して、他に同じような要素はないかを探す。
なぜ?と考え、少しずつ上位の概念を探っていくことも要素を取り出す作業のひとつ。すると、他の関係性が見えてくる。

▼フィルターを変えながら観察する

私はこの視覚的な抽象度の操作で培われる力が、問題の本質を探る思考としての抽象度の操作に新たな精度を与えると考えています。隈無く情報をえるのではありません。目を細めて全体を見るということ。ぼんやりと見ることが、それまで見えなかった大切なものを浮かび上がらせることに一役買えるのではないかと思います。

▼Studio 2年生の課題
画材を手に取る→対象を見る→描き写そうとする→描く
→描かれたものを見る→見たものとの違いを分析

▼会場のみなさんも、テーブルの上のペットボトルを、
描いてみてください。画材を変えて自分の視点がどのように
変わるのか、体験してみましょう

▼「視点」
面積・体積・容量か、重さのどちらかを選んで
身の回りのものをリサーチし、かたちにする。

井上涼介さんのプロセス
・魚の開きの気づきから、工業的なモノの開きができたら?と考えた
・立体の体験を通して世の中を観察する視点が決まる
・ナンキンハゼの種子が熟したときの殻のかたちの発見
・最終的な表現への応用

▼スプーンのデザイン
・スプーンをみてスプーンをデザインする
・たとえば、スプーンと一緒に使われる他のカトラリーとの関係を考える必要がある。
・どうやってスプーンを使っているかを考える必要がある(身体との関係)
・どうやってスプーンを使っているかを考える必要がある(料理の種類や他の器との関係)
・個人の家ではどんな役割でどんな位置づけなのか。
・社会ではどんな役割でどんな位置づけなのか。
・スプーンひとつデザインするにも、いくつもの観点が必要
・スプーンをみて人の暮らしや文化を考える

▼卒業生の作品
原盛夫さん
自宅での排泄処理による精神的負担の軽減
https://www.tamabi.ac.jp/pro/g_works/2017/pd/s9/

■質疑応答

Q.素朴な疑問ですごい恐縮なんですが私が美大ではない大学の出身の者で今日すごい興味深くお話聞かせていただいたんですが、何か実際にその早稲田大学さんであるとかいろんな大学さんとの違いがある中で私は元々何で大学の中に美術学部とかデザイン学部がないんだろうってのがすごい素朴に疑問だったんですが、何か今日のお話をお伺いしてみてその体験ってであるとか多分普通の大学は黄色の丸だけを勉強するとか、水色の丸だけを勉強するっていう感じなんですけど、あの体験を軸にそまたいで行くのが美大っていうようなはい。感じになるんですかね。

A.残念ながらといいますか、この学術分野の中にデザインというものも、芸術というものも入ってないです芸術学はありますけれども、この二つ入っていない。

Q.ちょっと私もデザインに全く知見がないので、すごい素人質問なんですけども、最初の事例で上がっていたあのアニマルラバーバンドについて、元々そのシンプルとか削ぎ落して抽象化していくことが本当にグッドデザインなのかその実験であるってことをおっしゃっていたと思うんですけど、あの結論として先生的にはやっぱり私達たくさん装飾がある中で生きていますけどそういう抽象化することとか、シンプルに暮らしていくことっていうのはデザインの正解だっていうふうに今は思われていらっしゃるんでしょうか

A.思っていません全く、うん。そうではなくてなんか美ってそこにあるものが美ではなくて、その美を見出すかどうかですよね。だからよく事例というかお話の中で、例えばその夏祭りで今日は、あの花火大会で中学生の男女でデートに誘って、そして浴衣で彼女が来て焼きそば食べるみたいな話で、その焼きそばのそのトレって、デザイナーがあれば美しいですよっていうものではなさそうですよね。でも、あれが例えば何かシュッとしたデザイントレイみたいなものだったら、その新全然素敵じゃないですよねあれピリピリしたあの透明なところからちょっと目がこんな立ってたりとかしてこぼれちゃうみたいなところが、やっぱり夏祭りの一つの風景としてとても素敵それ全体を見て美しいという評価だと思います。だから、シンプルかどうかではなくて、その周りとのその関係性において美しいかどうかということだと思うんですよね。なので、シンプルなものがデザインで優れているという考えは私は全く持っていないです。

Q.ちょっと質問がいいですか何か今の日本ってデザイン教えている学校はそういう国立とか総合大学をがあって、あとは美大があって、二つの分野と関わって何か時間をところがありますが私の理解は何かその総合大学はもっと理性的な感じなんかロジック、ロジカル能力が大事している。勝手に行くのアカデミックでは美大は何か作りながら、考え考えていくもと感性的な感じそれか、正しいのですか。

A.先ほどお話したようにやっぱ体験を、あの伴って、いるっていうところがすごく特徴だと思います。またその冒頭にちょっとお話しましたけれども、技術や工学と一緒だった時代がそのままあった方がよかったのか、どうなのかっていろいろ議論があると思うんですけど、美術大学の中に入ったことで、その色形っていう造形の部分とか美という概念とか、そういうところを特徴として発展してきたそこはおっしゃる通りに、ちょっと特徴なんだと思います。

Q.デザインの役割って自然科学とか社会科学の中の行き来で気づきがあると思うんですけれどこれって歴史の中で何て言うんですかね、10年前の行き来の仕方と、これから移り変わっていく行き来、結局繋がっていけばしていくと思うんですけど、この繋がり方とか行き来の仕方って時代に応じて変わっていくと思うんですね。今後先生はそれはどんなふうに効果変わっていくのかそれとも変わらないのかどう考えているのか知りたいです。

A.そうですね。あの、より一層その行き来でいうと、人の側からのアプローチですかねそういうのはもっともっと強くならなるでしょうし、そうしなければならないでしょうね。決して気に産業革命があってっていうそういう昔まで遡れば、そのそしてあの、そうですねデザインのこの役割って言ったら例えば、今ここにあるコンピュータがそうですよね。これがごく普通の人たちがパーソナルコンピュータを使うようになったということが何とかして普通の暮らしの中に翻訳して伝えるっていうことだったと思うんですけれども、そうではなくて、私達の暮らしがどうありたくて。そのためにどうするのかという、矢印で言うとその普通の暮らしからの情報をむしろ生かしていただくような、関係ですかね。そちらの方が進めて欲しいなと思います。

コメント

タイトルとURLをコピーしました